レーザーの基礎
動作原理
どのレーザーも、活性媒体 (ガスか半導体) を2枚の反射素子間に配置した基本構造を有します。この反射素子によって光が同媒体を往来することで共振し、エネルギーが蓄積されます。2枚の反射素子の一つは部分透過ミラーのため、レーザー光はこのミラーから取り出せます。この独特な光は、様々なアプリケーションに用いることができます。
レーザーのスペック
ビームサイズ (Beam Size): ビーム径の大きさはレーザー製品の出射端で定義されます。またここでいうビーム径とは、ガウシアンビーム径 (1/e2) を指します。なお楕円ビームを出射するタイプの場合は、楕円スポットの長軸と短軸の大きさから、”A x B”のように大きさを表記します。
ビーム拡がり角 (Beam Divergence): レーザー光を出射した場合にどの程度の拡がり角度を持って空間内に伝搬していくかを表わすファクターです。拡がり角は通常全角表示で表記します。単位は、mrad (ミリラジアン) を通常用います。1m先で 1mm 拡がる時が 1mrad、1m 先で 2mm 拡がる時が 2mrad になります。レーザーが楕円ビームを出射する場合、非点隔差が原因で楕円スポットの長軸と短軸方向で拡がり角の大きさが各々異なります (ダイオード vs. He-Neを参照)。
ライン放射角 (Fan Angle): ラインジェネレーターやパターンジェネレーターに対するスペックで、全角表示で通常表記します。
出力 (Output Power): 当社が販売するレーザーダイオード (LD) 製品は、レーザー光を発するコンポーネント (ダイオード素子)に、コリメーターレンズやラインジェネレーター用レンズ等の光学系と、ドライブ回路をアッセンブリしたモジュール化製品になっています。LD モジュール製品の場合、出力はダイオード素子自体からの出力ではなく、外部出射パワーで定義されます。言い換えると、LDモジュールに搭載されている光学系を通過後の最大出力を規格化しています。なおこの最大出力は名目値で、通常±10%内で実際の値は変化します。光強度はガウシアン分布となり、ビームの中心部が最も光強度が高く、そこから半径方向に移動するにつれ同強度が次第に落ちていきます。
CDRH クラス: 本カタログ上に紹介しているレーザー製品は、米国安全基準である CDRH (Center for Devices and Radiological Health) に基づいた等級 (クラス) 分けがされており、発振波長と外部出射パワーにより次のように等級分けされます。
[クラス II] 可視光 (400~700nm) で、人体の防御反応により障害を回避し得る程度の出力以下 (おおむね 1mW 以下)
[クラス IIIa] 可視光 (400~700nm) で、光学的手段でのビーム内観察は危険で、エネルギーの放出レベルがクラス II の出力の 5倍以下 (おおむね 5mW 以下)
[クラス IIIb] 可視光 (400~700nm)、或いは不可視光で、直接、又は鏡面反射によるレーザー光線のばく露により眼の障害を生じる可能性があるが、拡散反射によるレーザー光線にばく露しても人体に障害を生じる可能性のない出力 (おおむね 0.5W 以下)
検出能 (Detectability) / 比視感度 (Visibility): レーザービームの視認性は、SN比に依存します。 人間の目で観察する時であっても、光ディテクターで検出する時であってもです。SN比は、信号のパワー (レーザーのエネルギー) のノイズ (レーザーを照射する壁面の明るさ) に対する比で表されます。SN比が高ければ、レーザー光はより検出可能になります。目視アプリケーションにおいては、レーザーの波長が550nm (緑) に近づくほど人は明るい光として認識します。ディテクターアプリケーションでは、光学フィルターを用いることでSN比を高くできます。レンズを併用してディテクターの視野を制限するのも一考でしょう。レーザーの波長をディテクターの波長感度特性に合わせて選定するのが最良の方法と言えます。
動作寿命: レーザーダイオードモジュールの動作寿命は、使用温度を含めた環境や駆動電圧により寿命が大きく変わります。寿命を延ばすために、駆動電圧は各製品に記載された範囲内でも一番低い電圧で使用することをお勧めします。高い電圧で駆動する必要がある場合は、放熱対策を必ず行ってください。使用温度に関しても、記載された範囲内でも低めの温度で使用することが長寿命化に繋がります。レーザーダイオードモジュール製品の場合、動作寿命は一般的に10,000~20,000時間程度です。
Figure 1: レーザーダイオード
Figure 2: レーザーダイオードモジュール
レーザー用アクセサリー製品
パターンジェネレーター: レーザーは本質的にガウシアン分布を持ちます (「出力」の項を参照)。シリンダーレンズに代表される従来型の屈折型光学素子は、この分布を補正することができません。しかしながら、屈折型光学素子とは異なるある技術を用いることで、この補正を可能にしてとても良好な性能を得ることができます。回折型光学素子がそれに該当します。
空間フィルター: レーザー光の高次回折リングをフィルタリングすることで、ビーム強度分布を”クリーン”にします。ガウシアン強度分布の状態は引き続き維持されます。
レーザーオプティクス: ハイパワーレーザーを使用する場合、レーザーオプティクス (レンズやミラー) の選定を考慮することが重要になります。表面品質スペックが低い光学部品を使用すると、レーザービームが同素子内部で集光した際に損傷してしまうことがあるためです。
レーザー計測機器: パワーメーターやビューワー、検出カードやビームプロファイラーなど、レーザーの性能を特徴付ける様々な製品があります。
ビームエキスパンダー: より大きなコリメートビームを作ることで、長距離照射時により小さなスポットサイズが得られるようにデザインされた光学アッセンブリ品です。
レーザーダイオードの固定と位置取り
固定オプション: レーザーの固定と位置取りにはいくつかの方法があります。レーザーダイオードモジュールの場合、当社のダイオードマウントを用いて保持することができます。保持するレーザーの向きを調節するためのボール部とソケット部を装備し、他のパーツとの接続用に¼-20UNCのタップ穴が施されています。He-Neレーザーを固定するために元々設計されたV字型ブロックベースも、レーザーダイオードモジュールの固定に用いることができます。当社のツインリングタイプのレーザーホルダーは、シリンダーヘッド形状のHe-Neレーザーの固定に用いることができます。レーザーを固定する際は、可能な限りレーザーの放熱を促すように固定・保持する必要があります (温度依存性の高いレーザーダイオードはなおさらです)。
位置決めと位置取り: どのレーザー製品も本質的にポインティング精度に関する公差があります。ポインティング精度とは、レーザーのハウジング部の機械軸に対する光軸のずれ量を弧度法で表わしたものです。一部のマウント製品は、保持したレーザーの向きが調節できる機構を搭載しています。
補足: レーザーのポインティング精度の測定方法は、レーザーを軸ぶれのない治具 (V字型ブロックベースなど) 上で一回転し、その時に得られるレーザースポットの円の軌跡から、円の半径Rを計測します (上図参照)。このRと照射距離Dの関係から、弧度法によりポインティング精度が算出されます。その角度でレーザーのハウジングを固定すれば、レーザービームの向きが正確にアライメントされた状態となります。
レーザーダイオード vs. He-Ne レーザー
「He-Neレーザーはどういう時に使用するとダイオードレーザーよりもいいの? またダイオードレーザーはどういう時がいいの?」 - この質問に対する答えは、アプリケーションに依存します。これを決定するための最も簡単な方法は、レーザー各タイプの長所と短所を、ニーズを元に理解していくことだと思います。以下の表は、各タイプのレーザーの特徴や代表的スペックを比較したものです。
He-Ne | ダイオード | |
共通する発振波長 | 543nm, 594nm, 612nm, 632nm | 532nm, 635nm, 670nm, 780nm, 830nm |
サイズ (ハウジング) | 大きめで交換が困難 | 小型で交換・修理が容易 |
ビームサイズ | ~0.5-1mm (真円) | ~4 x 1mm (非点隔差/楕円) |
出力 | 0.25-30mW (最小値で規定) | 1-25mW (最大値で規定。なお一部モデルは変調可能) |
ビーム拡がり角 | ~1-2mrad (真円) | ~0.5 x 1mrad (非点隔差/楕円) |
出力変調/パルス変調 | 変調出力は一般に不可 | 一部の特殊モデルは対応可能 |
出力安定性/ノイズ | 高安定化バージョンあり | 通常はノイズが高め |
コスト | 高コスト (但し寿命は長い) | 低コスト (大抵は交換が容易) |
製品寿命 | 10-40,000時間 (種類により異なる) | 10-20,000時間 (種類により異なる) |
環境依存性 | 温度依存性は通常低い | 波長/寿命が温度の影響を多少なり受ける (ヒートシンクの使用を推奨) |
利用可能なアクセサリー製品 | パターンジェネレーター (屈折型/回折型) やビームエキスパンダーなど、多くのアクセサリー製品がベゼルアダプターを介して使用可能 | 集光レンズやパターンジェネレーター (屈折型/回折型)、及びビームエキスパンダーなど。但しダイオード製品のハウジングデザインに依存して使用できるアクセサリーに制限あり |
非点隔差: x軸とy軸における拡がり角の違い | ビーム集光時に真円ビームスポットを形成し、集光位置の前後ではビームのピンボケが対称的に発生 | ビーム集光時に真円ビームスポットを形成し、集光位置の前後ではビーム形状が楕円状に変化 (ピンボケは非対称的に発生) |
可干渉距離: ホログラフィや光干渉に使用 |
長いコヒーレント長 (~2-3m) | 短いコヒーレント長 (数ミり程度) |
偏光: 光路を曲げる際に重要 |
ランダム偏光と直線偏光の両タイプあり | 多くは高次に偏光された状態 |
電気的接続 | パワーサプライ付属で簡単接続 | 多くはバラ線仕様 (パワーサプライを別売り販売) |
代表的アプリケーション | ホログラフィー、光干渉、測量 | アライメント、マシンビジョン、スキャンニング、センシング (OK/NG) |
もしくは 現地オフィス一覧をご覧ください
クイック見積りツール
商品コードを入力して開始しましょう
Copyright 2023, エドモンド・オプティクス・ジャパン株式会社
[東京オフィス] 〒113-0021 東京都文京区本駒込2-29-24 パシフィックスクエア千石 4F
[秋田工場] 〒012-0801 秋田県湯沢市岩崎字壇ノ上3番地