良質なイメージングを得るための11のベスト・プラクティス
著者: Gregory Hollows, Nicholas James
本ページはイメージングリソースガイドの一部です
お客様のアプリケーションがマシンビジョン、ライフサイエンス、セキュリティ、或いはITSシステムにかかわらず、イメージング技術の基本を理解しておくことは、洗練されたイメージングシステムの開発や導入に欠かせません。センサーや照明技術の進歩がシステム対応力に無限の可能性を秘める一方、これらの技術のデザインや製造には物理的限界があるのも事実です。光学部品もこの例外ではなく、オプティクスがシステム性能の制限因子になることもしばしあります。本ガイドに紹介するコンテンツは、お客様がイメージングシステムの特定やシステム性能の最大化を行い、かつ投資コストを最小化するのをサポートする目的でデザインされました。
大抵のアプリケーションに適用可能な、洗練された費用対効果の高いイメージングシステムを構築するためのベスト・プラクティスをまとめました。以下に紹介する考察は、イメージングシステムを設計する際に考慮するべきポイントをほぼ余すことなく解説していますが、どのアプリケーションも各々に独自で、追加の考察が必要となるかもしれません。
#1: イメージングシステムに広い空間を確保させる。
システムを組み立てる前に、その空間的要求を理解することは、特に高解像力や高倍率を求める場合に必然となります。カメラ技術の進化は、並外れて小さなサイズのカメラを生み出し続けています。しかしながら、こうした進化は、その寸法的制約から、中級以上の産業用イメージングシステムでは恩恵が余りありません。多くのアプリケーションでは、複雑な幾何学や、口径が大きく全長の長いレンズ、また寸法の大きなカメラが必要になることがあります。これは、その装置を駆動するために必要となるケーブル類や電源機器も同様です。プロジェクトのプランニング中にサイズ的な実現可能性を優先し、性能を犠牲にしてはいけません。プロジェクトのビジョンシステムの要件を最初に特定しましょう。光学的な部分周りのエレクトロニクスや機構部品をアレンジするのは、他の部分よりも通常は容易です。また照明もビジョンシステムの一部として重要な要素であり、検査対象物によっては拡散ドーム照明などの寸法の大きな光源が必要になる場合もあります (ベスト・プラクティス #4 をご覧ください)。
#2: 眼を信じるのはやめましょう。
人の眼と脳の組み合わせは、そこにない情報までも埋めてしまう能力を持つとりわけ進化したイメージング & 分析システムです。加えて、人が見て処理するコントラストは、イメージングシステムのそれとは基本的に異なります。画質や性能要件が一致していることを確実にするため、ソフトウェアを用いた分析手法が用いられなければなりません。人の眼には良く見える画像も、実際には十分でない場合があるのです。
#3: 近づけすぎないで。
レンズの作動距離 (WD) の長さに比べて極端に大きな視野サイズ (FOV) を得ようとすると、その物理的制約から、光学部品のデザインに過度の要求を強いることになり、システム性能を低下させて、画像処理の負担を大きく、かつその処理時間を長くしてしまいます。性能を最大化しながらコストや複雑性を最小化するために、必要とするFOV幅のおおよそ2~4倍のWDで機能するレンズの選定が推奨されます。システムを組み立てる前に、ベスト・プラクティス #1 を思い出し、イメージングシステムの空間的要件を今一度考えてみましょう。
この考察は、センサーサイズと焦点距離の関係にも適用できます。レンズの性能を最大化するために、レンズの焦点距離をセンサーサイズの対角長の2~4倍の大きさにするのがベストです。
Figure 1: 2つのレンズデザイン 1a(左)と1b(右)は、どちらも同じ実視野サイズを有しますが、作動距離は全く異なる
#4: 状態に応じた照明を行う。
レンズとセンサーが共に効果的に機能するために、物体に光を適切に当てて高いコントラスト画像を作り出さなければなりません。検査対象物の性質と画像として映し出したい全ての欠陥部の性質を理解した上で、適切な照明法を用いなければなりません。なおこれらの光源は時にとても大きな寸法のものになります (ベスト・プラクティス #1を参照)。照明法に関する更なる情報は、照明方法の正しい選択 をご覧ください。
#5: 色も大切です。
照明に用いられる波長 (色)は、システム性能の改善や低下に大きなインパクトを与えます。例えば、高品質オプティクスと最上位グレードのラインセンサーを用いたアプリケーションにおいて、照明を広帯域放射のものから単色光または特定波長帯放射のものに切り替えると、性能をかなりの程度で改善できます。ベスト・プラクティス #4でも解説していますが、波長の適切な選択によって高コントラストとゼロコントラスト間の違いを作り出します。波長が適切に選ばれているかどうかに依存して、照明の色がシステムを成功にも、或いは失敗にも導くことがあります。
Figure 2: 光の波長に依存して最良フォーカスポイントが複数になる。この図では3つの異なる波長に対して3つのポイントが存在する
適切なフィルタリング技法がシステム性能にどのように影響を与えるかは、マシンビジョンでのフィルター適用をご覧ください。
#6: 高い解像力と深い被写界深度は共存できない関係。
被写界深度と焦点深度にも解説している通り、解像力と被写界深度 (DOF)を最大化することは、レンズの可変絞り用リング、即ちFナンバーを各々違う方向に持っていくことを意味します。とても高い解像力を深い被写界深度内にわたって持たすことは現実的に不可能です。これを実現するには、液体レンズかマルチイメージングシステムの使用など、より手の込んだソリューションを導入する必要があります。
#7: 全てのことを行える単一レンズは存在しない。
解像力への要求が高くなると、作動距離と実視野の広範にわたって光学的収差 (性能に負の影響を与える光学設計上の諸属性) を減らすことが次第に難しくなります。予算の制約がなかったとしても、限界があります。この理由から、同様のアプリケーションに対して複数のレンズソリューションが求められます。
Figure 3: 異なるアプリケーションに用いられる2つのレンズサイズの比較
レンズ性能に関する詳細は、イメージングレンズ選定ガイドで解説しています。
#8: 検査対象物を深く理解する。
イメージングの基本は、検査対象物の可能な限り最も高いコントラスト画像を作り出すことです。そのため、材質や仕上げといった対象物の特性の理解は、成功するために欠かせません。加えて、どのパーツが良品でどのパーツが不良品であるかを単に知ることも十分ではありません。高位の信頼性と再現性を確保するため、検査される細部 (ディテール) のレンジや良品/不良品に対する限界をむしろ理解していなくてはなりません。
#9: 制御オタクになれ。
イメージングシステムを導入する環境を制御できれば、結果の信頼性や一貫性に十分な影響を与えられます。加えて、偶発的問題の可能性も減らすことができます。フィルターを用いてコントラストを高めたり、遮光バッフルを用いてシステム内に入ってくる不要な光の侵入を遮ったり、或いは計測デバイスを用いて光源の分光的安定性を監視したりするなど、環境を制御することは、将来的な想定外の事態の発生頻度を減らすことに繋がります。こうした手法のいくつかは極めて低コストで導入でき、高価なイメージングシステムの性能を守り、そして高めます。
#10: 躊躇せずに尋ねよ。
ある部品が上手く機能したり、機能しなかったりする理由を尋ねるのをためらわないでください。サプライヤーは、どの部品が要求する結果に到達可能で、どの部品がそうでないのかを説明できなければなりません。答えはいつも同じになるとは限りません (物理的法則や設計不備などの理由から)。ですが、設計者や製造者は、自社の製品の対応力をきちんと説明できなければなりません。
#11: イメージングシステムの基本パラメータを理解して指定するために。
イメージングシステムに要求するスペック要件を狭めることで、市販される広範なレンズ製品やセンサー (カメラ)製品を比較検討可能な範囲にまで絞ることができます。イメージングシステムの基本パラメータは絶好の出発点であり、次のセクションで詳細を解説しています。
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