レーザーシステムの10のパラメーター
本ページはレーザーオプティクスリソースガイドのセクション1.1, 1.2です
材料加工、レーザー手術、リモートセンシングなどの多種多様なアプリケーションで広範なレーザーシステムが普及していますが、レーザーシステムの多くは主要パラメーターを共有します。こうしたパラメーターに対する共通用語を確立することで、ミスコミュニケーションを防ぎ、それを理解することでアプリケーション要件に合致するレーザーシステムや部品を適切に指定することが可能になります。
Figure 1: 一般的なレーザー加工システムの概略図。レーザーシステムの主要な10のパラメーターを番号付けして解説
基本パラメーター
以下の基本パラメーターは、レーザーシステムのもっとも基礎的なコンセプトであり、より高度なトピックを理解するうえで大変重要です。
1:波長 (一般的な単位: nm - µm)
レーザーの波長は、出射された光波の空間周波数を表します。与えられた使用事例に対して最も適する波長というのは、アプリケーションに高度に依存します。材料が違えば、材料加工における光の吸収特性も波長に依存し、材料との相互作用も異なる結果となります。同様に、リモートセンシングにおいては大気の吸収や干渉も特定の波長に異なる形で影響を及ぼし、医療用レーザーアプリケーションでは、皮膚のさまざまな色に応じて異なる特定波長を吸収します。短波長レーザーとそのレーザーオプティクスは、周辺への熱影響を最小限に抑えながら小さく精密な形状を作るという点で有利ですが、通常は長波長レーザーよりも高価で、損傷も生じやすくなります。
2:パワー & エネルギー (一般的な単位: W または J)
レーザーのパワーはワット (W) で測定され、連続波 (CW) レーザーの光出力、もしくはパルスレーザーの平均出力を表すのに用いられます。パルスレーザーはパルスエネルギーでも特徴づけられます。これは、レーザーの平均出力に正比例し、繰り返しレートに反比例します (Figure 2)。Energy is measured in joules (J).
$$ \text{Pulse Energy} = \frac{\text{Average Power}}{\text{Repetition Rate}} $$
Figure 2: パルスレーザーのパルスエネルギー、繰り返しレート、平均出力の関係
パワーやエネルギーの高いレーザーは、一般に高価で、無駄な熱をより多く発生します。パワーやエネルギーが増えると、高いビーム品質を維持することが次第に難しくなります。パルスレーザーやCWレーザーについての詳細は、レーザー損傷閾値をご覧ください。
3:パルス持続時間 (一般的な単位: fs - ms)
レーザーパルス持続時間、あるいはパルス幅は、レーザーの光パワーの半値全幅 (FWHM) と時間の関係から通常規定されます (Figure 3)。超短パルスレーザーは、材料の精密加工や医療用レーザーをはじめとする一連のアプリケーションで多くのメリットがあり、ピコ秒 (10 -12秒) からアト秒 (10 -18秒) の範囲の短いパルス持続時間を特徴とします。詳細は、超短パルス分散と高分散ミラーをご覧ください。
Figure 3: パルスレーザーのパルスは繰り返しレートの逆数によって時間的に離れている
4:繰り返しレート (一般的な単位: Hz - MHz)
パルスレーザーの繰り返しレート、あるいはパルス繰り返し周波数は、毎秒当たりに出射されるパルス数、もしくは時間的なパルス間隔の逆数で表されます (Figure 3)。前述の通り、繰り返しレートはパルスエネルギーに反比例し、平均出力には正比例します。繰り返しレートは、レーザーの利得媒体に依存することが多く、多くの場合ばらつきがあります。繰り返しレートが高くなると、レーザーオプティクス表面と最終的な集光スポットでの熱緩和時間が短くなり、材料への加熱がより迅速になります。
5: Coherence Length (Typical units: mm to m)
Laser light is coherent, meaning that there is a fixed relationship between the electric field phase values at different times or locations. This occurs because laser light is produced by stimulated emission, unlike most other types of light sources. Coherence degrades throughout propagation and the coherence length of a laser defines a distance over which its temporal coherence is maintained to a certain quality.
6: Polarization
Polarization defines the orientation of the electric field of light waves, which is always perpendicular to the direction of propagation. Much of the time, laser light will be linearly polarized, meaning that emitted electric fields consistently point in the same direction. Unpolarized light would have electric fields pointing in many different directions. The degree of polarization is often expressed as a ratio of the optical power of two orthogonal polarization states, such as 100:1 or 500:1. For more information about polarization, visit our Introduction to Polarization application note.
ビームパラメーター
以下のパラメーターは、レーザービームの形状や品質を特徴づけます。
7: ビーム径 (一般的な単位: mm - cm)
レーザーのビーム径は、ビームの横方向の拡がり、もしくは伝播方向に垂直な物理的サイズを特徴づけます。ビーム径は、1/e2幅で規定されることが多く、これはビームの強度が最大値の1/e2 (≈ 13.5%) に達するまでの領域になります。1/e2の地点では、電界強度は最大値の1/e (≈ 37%) に下落します。ビーム径が大きくなるほど、ビームのクリッピングを避けるためにオプティクスや全体のシステムを大きくする必要があり、コストが増大します。しかしながら、ビーム径を小さくするとパワー/エネルギー密度が増加し、これも弊害になります (次のパラメーターを参照)。
8: パワーもしくはエネルギー密度 (一般的な単位: W/cm2 - MW/cm2 または µJ/cm2 to J/cm2)
ビーム径は、レーザービームのパワー/エネルギー密度、もしくは光パワー/単位面積当たりのエネルギーに関係しています。ビーム径が大きくなるほど、一定のパワーもしくはエネルギーのビームのパワー/エネルギー密度は小さくなります。高いパワー/エネルギー密度は、(レーザー切断や溶接といった)システムの最終的な出力では望ましいものですが、低いパワー/エネルギー密度は、システム内でのレーザー誘起損傷を防ぐ点ではメリットがあります。これは、ビームの高パワー/エネルギー密度領域がイオン化することも防ぎます。こうした理由から、ビームエキスパンダーを用いてビーム径を拡大して、レーザーシステム内のパワー/エネルギー密度を低減させることがあります(ビームエキスパンダー参照)。この時、システム内の開口をクリッピングして無駄なエネルギーや潜在的損傷を引き起こさないよう、ビーム径を拡大しすぎないように注意する必要があります。
9: ビームプロファイル
レーザーのビームプロファイルとは、ビームの断面での強度分布を指します。一般的なビームプロファイルには、ガウシアンビームやフラットトップビームが含まれ、そのビームプロファイルはそれぞれがガウシアン関数とフラットトップ関数に準じます (Figure 4)。しかしながら、レーザー内部にはホットスポットや変動が常に存在するため、ビームプロファイルがそうした特性関数に完全に合致する完全なガウシアンビーム、もしくはフラットトップビームを作り出すレーザーはありません。レーザーの実際のビームプロファイルと理想的なビームプロファイルの差は、レーザーのM2因子をはじめとした指標を通じて通常表されます。ビームプロファイルとビーム品質評価に関する更なる情報は、ガウシアンビームの伝播およびビーム形状、ビーム品質およびストレール比をご覧ください。
Figure 4: 平均出力もしくは密度の等しいガウシアンビームとフラットトップビームのビームプロファイルの比較 – ガウシアンビームはフラットトップビームの2倍のピーク強度がある
10: 拡がり角 (一般的な単位: mrad)
レーザービームがコリメートであると想定されることはよくありますが、常にある量の発散があり、拡がり角は回折が原因でレーザーのビームウエストからの距離が長くなるにつれてビームがどれだけ拡がるかを表します。発散は、対象物がレーザーシステムから数百メートル離れた距離にあるLIDARシステムなど、作動距離が長いアプリケーションでは特に問題になります。ビーム拡がり角は、一般にレーザーの半角で規定され、ガウシアンビームの拡がり角 (θ) は以下の式で求められます:
$$ \theta = \frac{\lambda}{\pi w_0} $$
λはレーザーの波長、w0はレーザーのビームウエストです。拡がり角に関する更なる情報は、ガウシアンビームの伝播をご覧ください。レーザービームエキスパンダーで説明されている通り、ビーム径が大きくなると、拡がり角を小さくすることができます。
最終システムのパラメーター
最終的なパラメーターは、レーザーシステムの出力における性能を表します。
11: スポットサイズ (一般的な単位: µm)
一点に集光したレーザービームのスポットサイズは、集光レーザーシステムの焦点でのビーム径を表します。材料加工や外科手術といった多くのアプリケーションでは、スポットサイズを最小にすることが目標になります。これによってパワー密度が最大になり、とりわけ微細な形状の製作が可能になります (Figure 5)。球面収差を低減してより小さな集光スポットサイズを作り出すため、従来用いられてきた球面レンズの代わりに非球面レンズが用いられることがあります。いくつかのタイプのレーザーシステムは、レーザーを最終的にスポットに集光しないため、こうしたシステムではこのパラメーターは当てはまりません。
Figure 5: イタリア技術研究所におけるレーザー微細加工の実験では、一定のフルーエンスでスポットサイズを220µmから9µmに縮小した場合、ナノ秒レーザードリリングシステムのアブレーション効果は10倍の上昇を見せた1
12: 作動距離 (一般的な単位: µm - m)
レーザーシステムの作動距離は、一般に最終的な光学素子 (通常は集光レンズかデブリシールド) からレーザーが焦点を結ぶ物体や表面までの物理的距離として規定されます。医療用レーザーなどの特定アプリケーションでは、作動距離を最小化しようとしますが、リモートセンシングなどの他のアプリケーションでは、多くの場合作動距離範囲を最大化することを目標にします。
参考文献:
Brandi, Fernando, et al. “Very Large Spot Size Effect in Nanosecond Laser Drilling Efficiency of Silicon.” Optics Express, vol. 18, no. 22, 2010, pp. 23488–23494., doi:10.1364/oe.18.023488.
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