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高度なレンズ選定

高度なレンズ選定

本ページはイメージングリソースガイドセクション6.3です

前セクションでは、マシンビジョンシステムで選定される最終部品がレンズであるという観点から、レンズ選定を主として解説しました。本セク ションでは、特定のアプリケーションにとって重要となるレンズとカメラの両方を同時に選定することについてアプローチします。このセクションでは、Figure 1に示す通り、2次元バーコードを200mmの距離から撮像する例から説明していきます。

200mmの距離から撮像する2次元バーコードの画像
Figure 1: 200mmの距離から撮像する2次元バーコードの画像

検査対象物から、それを構成要素に分解することが、レンズ選定の最初のステップになります。具体的に、重要な特徴は何か? その特徴はどれくらいの大きさか? マシンビジョンソフトウェアが適切に機能するために、観察しようとする特徴をカバーするのに必要な画素数はどれくらいか? といった点です。

多くの場合ベストなのは、特徴部分のサイズとそれを撮像するのに使う画素数から始めることです。Figure 1のバーコードの場合、この値はかなり明確です。特徴部分のサイズは100µmで、各特徴部分間に少なくとも100µmの空間があります。これは、この特徴部分に対応する空間周波数が物空間側で5$ \small{ \tfrac{\text{本}}{\text{mm}}} $になることを意味します (この計算を再確認する場合は解像力を参照)。この値が、求められるレンズの倍率を決定する上での最初の部分、パズルで例えるところの最初のピースになります。

次に、全体のFOVのサイズを考えていかなければなりません。これはバーコード自体のサイズだけでなく、FOV内の位置的不確実性を考慮した空間も確保する必要があることを意味します。バーコードが25mm x 25mmの場合、35mmのFOVが求められると考えたほうが良いでしょう。今回の例では、バーコード上の各特徴部分に対応するのに、少なくとも3画素分は必要と考えます。バーコードの特徴部分のサイズが100µmなので、物空間側では1画素当たり33µmが少なくとも必要ということになります。

この時点でこれを実現できるかを理解するために、異なるカメラで評価することができます。コストを最小限に抑えるには、可能な限り少ない画素数のものから始めていくことが重要です。今日のマシンビジョンの世界では、それが多くの場合0.3MP、あるいはVGAレベルの解像度 (640x480) になります。センサーのアスペクト比を見ると、ちょうど4:3です。しかしながら、必要となるFOVは1:1であるため、これはセンサーの小さな辺の寸法 (480画素) が35mmのFOVに対応するために用いられる必要があり、大きな辺の寸法の一部は無駄になることを意味します。

480画素が35mmの空間に用いられるため、物空間側では一画素当たり73µmになります。このカメラでは明らかに本アプリケーションには役不足であり、約3倍高い解像度が必要になります。4.5µm画素を備えた1600 x 1200センサーで計算をもう一度実行すると、一画素当たり29µmとなり、解像度的に十分になります。しかし、これがカメラやレンズがある方の像空間側ではどのように対応するのでしょうか? ここで、システムを倍率に関連付ける必要があります。

1600 x 1200センサーの画素サイズは4.5µmで、全体寸法は7.2mm x 5.4 mmです。式 4(基本的なレンズ選定参照)を用いると、求められる倍率は0.15Xになります。この倍率を用いて、必要となるレンズを決定するだけでなく、イメージングシステムがバーコードの画像を適切に再現するために必要となる解像力も決定することができます。センサーが選定されたので、基本的なレンズ選定の式 3を用いて、レンズの焦点距離を決定することができます。式 6.3を使用すると、WD=200mmに必要な焦点距離が30mmになります。しかしながら、必要な倍率 (0.15X) は、25mmレンズではWD=230mmで得ることができ、本例においてはこれで十分です。これでレンズを仮に選定できましたが、求められる解像力についてはどうでしょうか?

物空間で必要な解像力は5$ \small{ \tfrac{\text{本}}{\text{mm}}} $です。これを倍率で割って像空間に変換すると、対象物を適切に表示するためには33$ \small{ \tfrac{\text{本}}{\text{mm}}} $が必要なことがわかります。この値は、センサーのナイキスト周波数と、使用されているレンズの変調伝達関数 (MTF) の2つの数に対して確認していく必要があります。ナイキスト周波数の詳細は、解像力をご覧ください。式 1は、センサーのナイキスト周波数を表します。

(1)$$ \xi _{\small{\text{Nyquist}}} = \frac{1}{2 \times s} $$
(1)
$$ \xi _{\small{\text{Nyquist}}} = \frac{1}{2 \times s} $$

ここで、sは画素サイズです。式 1を使用すると、4.5µm画素のセンサーのナイキスト周波数は111$ \small{ \tfrac{\text{本}}{\text{mm}}} $になります。求められる33$ \small{ \tfrac{\text{本}}{\text{mm}}} $よりも大きいため、このカメラは適切な選定であると言えます。ここで、特徴部分を撮像するのに3画素分が必要であったということ、そしてナイキスト周波数よりも約3倍低い値になったことに留意してください。この条件が万全を期すためにここに入りました。

Figure 2は、f=25mmのC シリーズ 固定焦点レンズのWD=166mm時のMTF曲線を示します (MTF曲線の読み方に関する詳細は、変調伝達関数をご覧ください)。曲線は、25mmレンズが33$ \small{ \tfrac{\text{本}}{\text{mm}}} $時で83%のコントラストを実現することを示しており、十分すぎるほどの値です。

MTF curve of a 25mm C Series fixed focal length lens that achieves a more than sufficient resolution for this example.
Figure 2: 25mm Cシリーズ固定焦点レンズのMTF曲線。この例では十分すぎる解像力を備えている

一般に、イメージングレンズが対象物を適切に解像するのに必要な最小コントラスト値は20%なので、このレンズはこの解像力において十分すぎるほどのコントラストを備えていることになります。

これは、特定のアプリケーションに対してレンズを選定する際の氷山の一角にすぎません。MTFは、いくつかの要因によって影響を受け (MTF曲線とレンズ性能で詳細に説明)、多くの場合は単純ではありません。次のセクションでは、特にレンズを中心に、それがカメラとどの程度マッチングするのかを詳しく見ていきます。

レンズ性能の変化

レンズメーカーは、レンズの使用条件に合わせてMTF曲線を用意することができます。上記バーコードの例では、25mmレンズのMTFを参照して、撮像対象のバーコードに対して十分なコントラスト再現性をもつかを判断しました。ここで、同じレンズを使用した別の例を用いて、意図した通りに機能しない場合があることを紹介します。

Figure 3の2つのMTF曲線は、同じ f=25mmレンズを同一の作動距離 (0.76Xの倍率になる) にした時のものですが、Fナンバーと波長範囲は各々変えています。これが同じレンズだとは到底思えません! 重要なポイントは、仕様書上のMTF曲線を見るだけではそのレンズの動作範囲全体の性能が適切に説明されず、特定条件時での曲線が必要になるということです。

A high resolution 25mm lens’s MTF at different settings, reinforcing the importance of comparing the specific lens curves.
A high resolution 25mm lens’s MTF at different settings, reinforcing the importance of comparing the specific lens curves.
Figure 3: f=25mmの高解像力レンズを異なる条件に設定した時のMTF。同じレンズでも、使用条件が変われば別物の曲線になってしまうことを端的に表す

レンズのMTFをベースに、物空間側で解像可能な最小サイズを決定することができます。しかしながら、MTF曲線は常に像空間側での性能を規定しているため、像空間側の情報を物空間側のそれに変換しなければなりません。幸いなことに、これは倍率を用いたとても単純な変換です。次の例は、Figure 3の曲線を出発点としてこの計算を完結する方法を解説します。本例では、コントラスト最小値を20%と仮定し、上図のレンズは像空間側で250$ \small{ \tfrac{\text{ 本}}{\text{mm}}} $を解像でき、これは20%コントラストに一致する曲線上の空間周波数を見つけることで決定できます。式 2を用いて、画素サイズ (あるいはこの例では物体側への一つの周波数から換算された像空間解像力 $ \small{\xi _{\small{\text{Image Space}}}} $) は次のように計算されます:

(2)$$ \xi_{\small{\text{Image Space}}} = 250 \tfrac{\text{lp}}{\text{mm}}= \frac{1000 \tfrac{\large{\unicode[Cambria Math]{x03BC}} \normalsize{\text{m}} }{\text{mm}} }{2 \times s} \therefore s = 2\large{\unicode[Cambria Math]{x03BC}} \normalsize{\text{m}} $$
(2)
$$ \xi_{\small{\text{Image Space}}} = 250 \tfrac{\text{lp}}{\text{mm}} $$ $$ 250 \tfrac{\text{lp}}{\text{mm}} = \frac{1000 \tfrac{\large{\unicode[Cambria Math]{x03BC}} \normalsize{\text{m}} }{\text{mm}} }{2 \times s} $$ $$ \therefore s = 2\large{\unicode[Cambria Math]{x03BC}} \normalsize{\text{m}} $$

そして倍率 (0.076X) で換算して、

(3)$$ \frac{2 \large{\unicode[Cambria Math]{x03BC}} \normalsize{\text{m}} }{0.076X} = 26 \large{\unicode[Cambria Math]{x03BC}} \normalsize{\text{m}} \text{ is the minimum object feature size} $$
(3)
$$ \frac{2 \large{\unicode[Cambria Math]{x03BC}} \normalsize{\text{m}} }{0.076X} = 26 \large{\unicode[Cambria Math]{x03BC}} \normalsize{\text{m}} \text{ min obj. feature size} $$

比較すると、Figure 3の下にある曲線を持つレンズは、282µmサイズの物体を解像できるだけになります (上記の例と同じ計算を使用)。前ページの例では、実際に使用するカメラ/センサーがまだ選定されていないと仮定していて、レンズをイメージングシステム内の制限因子にしています。カメラセンサーがレンズよりも前に選定されている場合は、レンズが使用するセンサーの画素サイズを解像できるようにしなければなりません。

前ページの例を続けると、3.45µmの画素サイズのソニー IMX250 センサーを採用するカメラが選定されるなら、像空間解像力は式 3から144.9$ \small{ \tfrac{\text{本}}{\text{mm}}} $であることがわかります。MTF曲線を見ると、レンズは40%を超えるコントラストを達成していますから、大抵のアプリケーションに対して十分すぎると言えます。しかしながら、公式6.7と同じ計算を用いて物空間側に換算してみると、3.45µmの画素サイズは物空間側で45µmに対応するだけとなります。これは、レンズが26µmの物空間側解像力に対応可能な反面、センサーがシステム内の制限因子になってしまうことを意味します。こうした考察の全ては、適切なレンズをアプリケーションに応じて決定するために実行されなければなりません。これにより、マシンビジョンの問題に対する最善のソリューションを見つけることができるのです。

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