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レンズ性能曲線
Edmund Optics Inc.

レンズ性能曲線

著者: Gregory Hollows, Nicholas James

本ページはイメージングリソースガイドセクション2.6です

 レンズの性能を理解し予測することは、とても難しい任務です。物理的法則や設計基準、製造上の公差や誤差を始め、レンズの性能に影響を及ぼす数多くのファクターが存在するからです。最善のシステム性能を得るために、光学設計者と最終使用者の両者は、レンズ性能を把握するために入手可能な複数の製品性能データにアクセスします。これらの性能曲線は、アプリケーションに合った正しいレンズを選定する際の参考データとして用意されています。

変調伝達関数 (MTF)

 変調伝達関数 (Modulation Transfer Function; MTF)曲線は、空間周波数 (解像度)が変化する時、レンズがそのコントラストをどのように再現するかを反映した情報の濃密な性能曲線です。この曲線は、アプリケーションニーズに応じて注目される特定基本パラメータにおいて、光学的収差が性能にどのような影響を及ぼすかを検討する際の参考データとしても利用されます。ビジョンシステムでは、基本パラメータを始めとして、何かしらの設定を変更すると、性能曲線の形状も変わってしまうことを理解しておくことも重要です。MTFがどのように計測されるか、またMTFの限界に関する詳細は、変調伝達関数 (MTF)とMTF曲線に解説します。また、基本パラメータの定義は、イメージングシステムの5つの基本パラメータに紹介されています。

 Figure 1にMTF曲線の共通的なスタイル – 縦軸に光学伝達関数 (コントラスト)、横軸に空間周波数 (解像度)をプロット – を紹介しています。空間周波数がどのように決定されるかは、解像力で網羅しています。この曲線は、特定の作動距離、Fナンバー、センサーサイズ、波長域におけるレンズ性能の大観を表わしています。


Figure 1: MTF性能曲線は、コントラストと空間周波数の関係を表わす

 当社が公開するMTF曲線の場合、複数の色の曲線 (黒、青、緑、赤)をプロットしています。一番上方にある黒の実線は、レンズの回折限界時の曲線を表わし、レンズ性能の理想的限界を再現しています。レンズ性能をどのように改善しようと試みても、この線より上側にプロットされることは絶対にありません。その他の色の線は、全てこの回折限界曲線よりも必ず下側にプロットされ、実際のレンズのMTF曲線を再現しています。各々の線は、異なるフィールド像高 (センサー上のポジション)に対応しています。下記曲線サンプルの場合、3種類の異なるフィールド像高がプロットされています: 青色の軸上曲線は、イメージサークル中心部でのMTF特性を表わし、緑色の70%像高曲線は、イメージエリア全体のおおよそ半分の位置におけるMTF特性を表わしています。最後に、赤色のフル像高曲線は、イメージセンサーのコーナーサイドにおけるMTF特性を表わします。なおサンプルによっては、より多くのフィールド像高をプロットしたMTF曲線も存在します。

 曲線内に見られるその他の注目すべきポイントに、TとSのアルファベットで記述された破線と実線状の曲線の性能差があります。Tは焦点のタンジェンシャル面 (yz面方向)を表し、Sはサジタル面 (xz面方向)を各々表します。この2つのフィールドは、光学面の非対称性によって生じる光学収差 (非点収差など)が原因で互いの面の焦点位置が異なってしまうために存在します。このことは、光軸上においてはタンジェンシャルとサジタルの2つの性能曲線に分かれないことも意味しています。しかしながら、レンズ素子が傾いていたり、偏芯が存在したりすると、非対称性がそこに生じ、光軸上にもTとSの異なる曲線が現れることになります。

 MTF曲線は、コントラストと空間周波数の関係を表します。MTF曲線を理解するかは、アプリケーションに高く依存します。

被写界深度 (DOF)

 被写界深度 (Depth of Field; DOF)曲線は、特定空間周波数 (解像度)を有するサンプルがレンズに対して前後に移動する時、レンズを再ピント調整するこ となしにMTF特性がどう変化するかを表わします。言い換えると、レンズの作動距離地点の前後でコントラストがどのように変わるかを表わしています。TECHSPEC® レンズデータシートに採用されたDOF曲線のサンプルをFigure 2に紹介します。


Figure 2: 被写界深度性能曲線は、コントラストが作動距離によってどう変わるかを表わす

 DOF曲線は、特定空間周波数 (像空間側)に対し、複数のフィールド像高条件別にMTF特性をプロットし (異なる色を用いて区別)、その違いを表示しています。但し、上述のMTF曲線にあった回折限界曲線は取り除いています。光軸に沿った異なる位置でMTF特性を計測すると、像の焦点ボケがシステム内に発生 し、一般的にコントラストは低下します。曲線の下方側にある水平線は、特定コントラストレベル (今回の場合は20%)における被写界深度の大きさを表わします。マシンビジョンシステムの場合、正確な測定結果を残すために必要とされる許容最小コントラストレベルは、一般的に20%とされています。

周辺光量比

 周辺光量比曲線は、センサー全体にわたる照明レベルの変化を定量化するために用いられます。照明に変化があると、解析するための最終画像に好ましくない効果をもたらすことがあります。相対光量の変化を引き起こす要因は、センサーへの周辺光量 – ロールオフ (周辺減光)と口径食の周辺光量比の頁で解説しています。Figure 3aの曲線サンプルは、明るさの相対比 (像面における最も明るい地点からの相対比)を縦軸、フィールド像高を横軸にしてプロットした、周辺光量比曲線の典型的スタイルです。


Figure 3a: 周辺光量比曲線は、フィールド像高による明るさの相対比をFナンバー別に表わす

 複数ある曲線は、レンズのFナンバー別の周辺光量比性能を再現しています。ここでFナンバーが増えると、周辺光量比は一般に増加することにご注目ください。但し、これは絶対的明るさを表わしているわけではありません。レンズのFナンバーが高くなると、全体的な明るさは減少してしまいます。Fナンバーに関する更なる情報は、Fナンバー (レンズの絞り/開口の設定)をご覧ください。

 X軸は、センサーの中心から同コーナーまでの距離を表わします。Y軸は、どの程度の照明がその地点に存在するかを表わし、照明の最も明るい地点 (通常はセンサーの中心)での明るさを100%とした時の相対比率で表わされます。レンズの周辺光量比が異なるセンサーサイズに対してどのように機能するかを確認するために、センサーサイズ別の対角線長を意味する点線をグラフ内に追記しています。Figure 3bは、F1.4設定時の像面における現実世界の明るさの変化を表わしたものです。周辺光量比に関する更なる情報は、センサーへの周辺光量 – ロールオフ (周辺減光)と口径食をご覧ください。

This Plot shows how the f/1.4 Curve, blue in 3a, will appear across a 2/3
Figure 3b: 本プロットは、Figure 2.8a内のF1.4時 (青色の曲線)に、2/3型センサーに対して実際にどのような明るさの相対比になるかを描いている

ディストーション

 イメージングシステムにおいてディストーションは、本来の位置情報に対して倍率的変化を与えます。ディストーションの量を表わすのにいくつかのスタイルがありますが、Figure 4は像高とディストーションの関係を表わしたもので、レンズ設計者やエンジニアがディストーションの性格付けを行うのに利用する典型的スタイルです。ディストーションに関する更なる情報は、こちらをご覧ください。Figure 4のプロットは、像の中心から同コーナーに向かって移動した各地点 (Y軸)におけるディストーションの量を百分率で表わしています (X軸)。ディストーションの絶対量が大きくなるほど、理想的な画像からどんどん離れた歪んだ画像になっていきます。

Distortion Curve
Figure 4: ディストーション曲線は、像面の中心からコーナーに至る倍率シフト量を表わす
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