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基本的なレンズ選定

基本的なレンズ選定

本ページはイメージングリソースガイドセクション6.2です

倍率可変レンズの選定方法

マシンビジョンレンズの種類では、より一般的なタイプのイメージングレンズを用途に基づき選定する方法について解説しました。イメージングレンズの選定をより正確に絞り込んでいくため、イメージングシステムの基本的なシステムパラメータを知っておかなければなりません セクション1: レンズとイメージングの基本を参照)。WD、FOV、そして解像力は、レンズの適切な選定を行う前に最低限必要なパラメータです。本セクションでは、レンズ選定を容易にするために、選定基準が絞り込まれ、カメラの選定も既に行われていると仮定します。

本セクションでは、固定焦点レンズやズームレンズが同じ原理で動作すると見なし、同一の方法で選定できるものとします。ズームレンズの場合は、個々の焦点距離で規定され、かつズーム機能をその距離で固定していると想定します。

全ての倍率可変レンズは、式 1に基づき焦点を結びます。

(1)$$ \frac{1}{f} = \frac{1}{z} + \frac{1}{z’} $$
(1)
$$ \frac{1}{f} = \frac{1}{z} + \frac{1}{z’} $$

ここで、z’は像距離 (像面とレンズ最終素子間の距離)、Zは物距離 (焦点を結ぶ物体とレンズ第一面間の距離)、fはレンズの焦点距離です。本式の場合、z’、z、およびfの値はすべて正値になります。式 1は、レンズの厚みがないと仮定した近似式であり、物像の各距離の関係を表します。焦点距離の値が決まると、物距離 (WD) が増加すると像距離は減少します。

平凸レンズや両凸レンズのような単レンズの場合、この公式は物距離や像距離が既知の時にどの焦点距離が適切なのかを決定するのに役立ちます。しかしながら、マシンビジョンシステムでは数多くのレンズ素子で構成されたレンズ (Figure 1のような) では、この式だといくつかの点で条件不足になります。具体的に、実視野が公式の変数に含まれていないこと、そしてマシンビジョン用レンズでは像距離を計測することが現実的ではないため、焦点距離の計算が不可能になることです。

倍率に関する式 2を用いて

(2)$$ m = \frac{z’}{z} = \frac{H’}{H} $$
(2)
$$ m = \frac{z’}{z} = \frac{H’}{H} $$

ここで、H’とHはそれぞれ像面のサイズ (通常はセンサーサイズ) とFOVのサイズです。式 1は、より有益な形の式 3に変換できます。

(3)$$ H = H’ \left( \frac{z}{f} - 1 \right) $$
(3)
$$ H = H’ \left( \frac{z}{f} - 1 \right) $$

式 3は、FOVやセンサーサイズといった基本パラメータが既知の時にどの焦点距離のレンズがアプリケーションに対応するかを迅速かつ容易に解決する方法を提案します。式 3中の「–1」の項は、残りの量と比較して小さいために、しばしば省略されます。

レンズ選定の一助となる目的で式 3を適用する際の前提は、カメラが既に選定され、解決すべき唯一の変数がレンズの適切な焦点距離 (f) であることです。この場合、レンズ選定は随分と容易になります。例えば、IMX250 センサー (2/3型, 5 MP) において、500mmのWDで175mmのFOVとが必要だと仮定します。式 3を用いて、f=25mmのレンズが最適とわかります。

一般に、オンラインでレンズ計算ツールを使用する場合、答えを得るために何らかの形式の式 3を使用しています。これはすべて大まかな計算であり、ディストーション値が大きいレンズ (フィッシュアイレンズなど) を使用すると理想値から外れ、またレンズの厚さがゼロであると仮定場合の式であることを理解する必要があります。

Figure 1と2は、式 3に焦点距離の異なる複数のレンズをプロットしたもので、異なるセンサー別に分けたものです (Y軸を別々に用意)。

Lenses of different focal lengths and their FOVs on ⅓ ” and 1∕1.8” sensors
Figure 1: 1/3型センサーと1/1.8型センサーにおけるレンズの焦点距離とFOVの関係
Lenses of different focal lengths and their FOVs on ⅔ ”and 1” sensors.
Figure 2: 2/3型センサーと1型センサーにおけるレンズの焦点距離とFOVの関係

このプロットは、カメラが既に選定されている場合に、マシンビジョンレンズの適切な焦点距離を視覚的に決定するのに役立ちます。X軸に沿って必要となるWDと対応するY軸 (使用するセンサーサイズに依存) を目で追い、両軸が座標面のどこで交わるかを確認します。その交点に最も近い焦点距離のレンズが選定条件に最も近く、ここを起点として必要となるレンズの選定を絞っていきます。

加えて、これらのプロットはマシンビジョンレンズにおける固定焦点レンズの重要なポイントも幾つか示しています。まず、より長い焦点距離のレンズは、光学設計上、最短WD (至近撮像距離) が長くなります。レンズとカメラの間にスペーサーを加えることで、WDを短くすることはできますが、画質は最終的に低下します (詳細はレンズ用スペーサーやシム、エクステンダーレンズを参照)。次に、同じ焦点距離のレンズでは、より大きなセンサーを使用する方がFOVのサイズが大きくなります。例えば、WD=350mmでf=12mmレンズを2/3型センサーに使用すると約370mmのFOVになりますが、1型センサーを使用すれば同じWDでFOVが約530mmになり、43%分増加します。最後に、線の存在しないプロットの隙間は、対応するスペックで機能する標準の在庫販売固定焦点レンズがないことを示しています。例えば、市販の焦点距離のレンズを用いて、2/3型センサーでWD=600mm時に525mmのFOVを実現することは不可能です。この条件に最も近いf=8.5mmのレンズをおおよそ510mmのWDで用いた時にそのFOVサイズが実現できます。

このプロットは、どのレンズがそのアプリケーションにベストなのかの選定範囲を絞る最初のステップになります。しかしながら、これだけではイメージングレンズの画質やディストーション、周辺光量比やその他の重要な性能に関する答えとはなりません。あくまでFOVとセンサーサイズの関係を示しただけのものです。

固定倍率レンズの選定方法

テレセントリックレンズや顕微鏡用の対物レンズといったレンズは、一見すると従来の固定焦点レンズと同じようにふるまわないため、イメージングシステム導入時の製品選定が難しいように思われがちです。しかしながら、実際の選定は従来のレンズよりはるかに簡単です。

いくつかの例外を除き、固定倍率レンズは一般に単一のWDでしか適切に機能しません。またこうしたレンズは、2.0X テレセントリックレンズといったように、焦点距離ではなく倍率で規定されます。倍率がレンズ鏡筒中に実際に記載され、その倍率のみでしか機能しないことから、FOVの大きさはイメージングシステムの基本の式 1 を並べ替えることで簡単に計算することがきます。

(4)$$ \text{FOV} =\frac{H}{m} $$
(4)
$$ \text{FOV} =\frac{H}{m} $$

ここで、mはレンズに規定された倍率、Hはセンサーサイズです。この式は、倍率がセンサーサイズに関係なく維持され、FOVだけが変化することを表しています。

一例として、機械加工部品内の穴の大きさの計測が必要なアプリケーションについて考えてみます。穴の大きさは20mm径で、イメージングシステム上ではそのパーツがわずかにずれて撮像されることがあるため、24mmのFOVが必要と考えます。1/1.8型センサー (水平方向は7.2mm) のカメラが選定されている場合、式 4を用いることで倍率を0.3Xと計算できます。今回は計測アプリケーションであるため、その倍率を有するテレセントリックレンズが選定されるべきです。

上の例では、カメラは既に選定されています。カメラが選定されていない場合は、レンズの選定がより複雑なものとなります。カメラが選定されていない場合のレンズ選定方法については、高度なレンズ選定でより詳しく解説します。

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