反射型対物レンズ入門
顕微鏡用対物レンズは、顕微鏡デザインの中で最も認識可能なパーツの一つです。顕微鏡用対物レンズは、画像を拡大して人の目で容易に観察できるようにします。この時、接眼レンズまたは画像システム (即ちイメージングレンズとカメラ) を用いて観察します。伝統的な対物レンズは屈折型デザインを採用し、複数枚の光学レンズから構成されます。しかしながら、高倍率で集光する光学系、とりわけ深紫外から遠赤外までに対して色収差補正する光学系へのニーズは、光学メーカーが経済的価格の標準規格品を開発させるまでに至っています。ミラーベースの反射型対物レンズがそれです。この対物レンズは、2枚またはそれ以上のミラーを用いて集光あるいは画像を形成する反射デザインを採用します。対物レンズに関する一般的な情報は、顕微鏡と対物レンズの理解をご覧ください。
最も共通するソリューションは、2枚のミラーで構成されるシュワルツシルド (Schwarzschild) 型デザインの対物レンズです (Fig.1参照)。このデザインは、小口径の二次ミラー (Secondary Mirror) と大口径の一次ミラー (Primary Mirror) で構成されます。小口径の二次ミラー (「副鏡」とも呼ばれます) は、蜘蛛の巣状の固定治具 (Spider Mount) で位置固定されます。対する大口径の一次ミラー (「主鏡」とも呼ばれます) は、中央に貫通穴があります。この対物レンズには、無限系デザインと有限系デザインの2種類の光学的デザインがあります。無限系デザインは入射光を一点に集光する用途に、対する有限系デザインはイメージング用途に用いられます。
Figure 1: 反射型対物レンズの構造
反射型対物レンズのタイプ
無限系デザイン
無限系デザインの反射型対物レンズ (Figure 2) は、集光アプリケーションに最適です。コリメート光 (例えばレーザー光源など) が二次ミラー内の中央開口部に入射すると、特定作動距離で一点に集光できます。この構成は、広帯域レーザー光源や波長の異なる複数のレーザー光源を一点に集光させる経済的手段となります。赤外 (IR) レーザーや紫外 (UV) レーザー (Nd:YAGレーザーなど) に参照用の可視光レーザーを組み合わせて集光させる用途が代表的です。
Figure 2: 無限系デザインの反射型対物レンズデザイン
有限系デザイン
有限系デザインの反射型対物レンズ (Figure 3) は、イメージングアプリケーションに最適です。有限系デザインは、画像を形成するのに結像レンズなどのレンズの追加を必要としないシンプルかつダイレクトなソリューションです。有限系デザインのミラーベースの構成は、卓越した分解能を実現し、屈折型を採用する伝統的な顕微鏡用対物レンズの置き換えも可能にします。無限系デザインの反射型対物レンズもイメージングアプリケーションに使用可能ですが、その際は結像レンズなどのレンズの追加を要します。しかしながら、この構成により光路中にビームスプリッターやフィルターといった光学部品の追加挿入が可能になります。
Figure 3: 有限系デザインの反射型対物レンズデザイン
反射光学系 vs. 透過光学系
従来の透過光学系を採用した顕微鏡用対物レンズに対する、反射型対物レンズのメリットは、色収差補正波長域の広さです。例えば、可視域で収差補正された透過光学系の対物レンズは、その設計波長域から外れるに従い、透過率が落ち始め、結像性能にも影響が出始めます。更に設計波長域から遠く離れた深紫外や赤外域、或いはその波長域で発振するレーザー波長では、透過量よりも反射量の方が逆に多くなり、結像性能も極端に悪くなってしまいます。
重要なスペック
市場に流通する反射型対物レンズ同士を比較する時、同対物レンズ特有の2つの仕様 –出射波面精度とオブスキュレーションは、確認しておかなければなりません。オブスキュレーションとは、反射型対物レンズに入射できる最大光量を100%とした時、そのうちの何%が障害物等の機械的要因により出射されないかを相対的に表したものです。反射型対物レンズの場合、一次ミラーで一旦反射した光の多くは、次段の二次ミラーの反射面に到達しますが、一部の反射光は到達 せず、二次ミラー中央の貫通穴 (Fig. 1におけるStray Light Baffle)まで戻ってしまいます。これを避ける目的のため、反射型対物レンズを製造する多くのメーカーは、一次ミラーの反射面中央部に光吸収コーティングを施します。またそれ以外にもスループットを落とす場所が二箇所存在します。それは一次ミラーの外周部と、同ミラーを固定している治具の脚部です。エドモンド・オプティクスのオブスキュレーションの仕様は、これら3つ全ての値を総合して公開していますが、他メーカーの何社かは最初のオブスキュレーションのみを出しているだけです。そのため、この仕様の比較を行う際は、注意が必要です。
出射波面精度は、反射型対物レンズを必要とする多くのアプリケーションにおいて、恐らく最も重要な仕様になります。出射波面精度とは、光学系に光が入射してから最終的に出射するまでに生じる波面のエラーを定量的に表したものです。最近のミラー製造における進歩は、高精度な光学面 (反射面) の製造とテストを可能にしています。PV値でλ/20オーダーを持つミラーの製作が可能になり、これによってλ/4以下 (PV値) の波面精度を有する反射型対物レンズの製造が可能になりました。エドモンド・オプティクスのReflx™反射型対物レンズは、λ/10 (RMS値) の波面精度を保証する標準性能バージョンと、λ/4 (PV値) を保証する高性能バージョンが選べます。Reflx™レンズの製作の際は、米国Zygo社のGPI-XPレーザー干渉計を用いて能動的なアライメント調整とテストを行い、全品が出射波面精度の仕様を満たすことを実証しています。
波面精度が高いと、反射型対物レンズに回折限界かそれに近い性能を持たせることができます。回折限界性能の対物レンズは、エアリーディスクによって定義される最小集光スポットサイズを作り出します。エアリーディスクは、対物レンズの開口数 (NA) や使用波長を用いた以下の計算式で定義されます:
エアリーディスクに関する更なる情報は、解像力とコントラストの限界: エアリーディスクのアプリケーションノートを参照ください。
従来の屈折式光学系を採用した対物レンズは、特定波長帯内での一連のアプリケーションに理想的なのに対し、反射型対物レンズは深紫外から遠赤外までの広帯域アプリケーションにおいて性能や画質を向上させるのに用いることができます。反射型対物レンズは、回折限界性能や色補正を重要視するFTIR分光、レーザーフォーカシング、エリプソメトリーといったアプリケーションに最適です。
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