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超短パルス分散

超短パルス分散

本ページはレーザーオプティクスリソースガイドセクション12.1, 12.2です

多くの種類のレーザーシステムでは分散の影響は小さなものですが、超短パルスレーザーのアプリケーションではとりわけ問題になります。超短パルスレーザーは、ピコ秒、フェムト秒、もしくはアト秒のレベルの短いパルス持続時間が特徴です。パルス持続時間の下限に到達したフーリエ限界パルスは、ハイゼンベルグの不確定性原理によって広い波長幅を有します (Figure 1)。こうした広帯域パルスが光媒体を透過する際、色分散によってパルスの持続時間が引き伸ばされ、超短パルスアプリケーションに弊害をもたらします。

 

Figure 1: As the pulse duration of an ultrafast laser decreases, the wavelength bandwidth increases
Figure 1: 超短パルスレーザーのパルス持続時間が短くなると、波長の帯域幅は長くなる

色分散の概要

レーザーパルスが光媒体を伝播する方法は、群速度 ($ \small{v_g}$) によって表されます。媒体中の光の位相速度の変動は、その波数 ($ \small{k}$) に関連します:

(1)$$ v_g = \left( \frac{\partial k}{\partial \omega} \right)^{-1} = c \left[ \frac{\partial}{\partial \omega} \left( \omega n \! \left( \omega \right) \right) \right] ^{-1} = \frac{c}{n \! \left( \omega \right) + \omega \frac{\partial n}{\partial \omega}} = \frac{c}{n_g \! \left( \omega \right)} $$

$ \small{\omega}$は光の角周波数、$ \small{c} $は真空中の光の速度、そして$ \small{n} $は媒体の屈折率です。波数$ \small{k}$は$ \tfrac{2 \pi}{\lambda}$です。この概念は、光波の空間周波数としても知られます。パルス速度と群速度の間の違いはFigure 2に図解されています。

Figure 2: The group velocity defines the motion of the envelope, or wave packet, highlighted in blue, while the phase velocity defines the higher frequency motion of each individual point of the wave itself, highlighted in red
Figure 2: 群速度はエンベロープ (波束) の動きを規定し (青線で図示)、位相速度は波そのものの個々の地点のより高い周波数の動き (赤線で図示) を規定する

複数の波長を含む光がある材料を伝播する時、群速度の周波数 (波長) 依存性から、長波長 (低周波数) の方が短波長よりもわずかながら速く通過します1。これにより、プリズムを通過する光が材料のスペクトル分散によって各構成色に分離されるのと同じ様に、波面の位相のスペクトル変動が生じます。群速度が周波数に対する位相速度の一次導関数として与えられるため、群速度分散 (Group Velocity Dispersion; GVD) は、周波数に対する逆群速度の導関数として次式のように表されます。

(2)$$ \text{GVD} = \frac{\partial}{\partial \omega} \left( \frac{1}{v_g} \right) = \frac{\partial}{\partial \omega} \left( \frac{\partial k}{ \partial \omega} \right) = \frac{\partial ^2 k}{\partial \omega ^2} $$

逆群速度は一次分散として、GVDは二次分散として知られています。群速度は、屈折率の一次導関数が波長または周波数に対応するという点でスペクトル分散と似ており、GVDは、その二次導関数が波長または周波数に対応することから、部分分散と同様に用いられます。低GVD用のオプティクスの設計は、色補正された性能を設計するのに似ています。違う点は、アッベ数や部分分散よりもむしろ群速度やGVDに注目している点です。

GVDは光媒体の長さの影響を受けません。群遅延分散 (GDD) は媒体の長さを考慮し、GVDに長さをかけることで求められます。

(3)$$ \text{GDD} = \text{GVD} \times \text{Length} $$

GVDは波長に大きく依存し、一般に$ \tfrac{\text{fs}^2}{\text{mm}} $の単位で通常表されます。例えば、合成石英のGVDは589.3nmで$ \small{+} 57 \tfrac{\text{fs}^2}{\text{mm}} $、1500nmでは$ \small{−} 26 \tfrac{\text{fs}^2}{\text{mm}} $です。この二つの波長の間にゼロ分散波長 (1.3µm近傍) があり、そこではGVDがゼロになります。Figure 3は、合成石英の波長に対するGVDの変動量を示しています。光ファイバー通信では、GVDは一般に周波数ではなく波長に対する導関数で規定され、通常は $ \tfrac{\text{ps}}{\text{nm km}} $ の単位で表されます。

Figure 3: GVD vs wavelength for fused silica with a zero-dispersion wavelength around 1.3μm
Figure 3: 1.3µm付近にゼロ分散波長をもつ合成石英の波長別GVD特性

超短パルスレーザー

超短パルスレーザーは、その短いパルス持続時間と高いピークパワーによって、精密な生物医学アプリケーション、材料加工、マイクロマシニング、非線形顕微鏡やイメージング、そして通信をはじめとしたさまざまなアプリケーションに有益です。超短パルスレーザーは、材料加工やマイクロマシニングでは周辺部への損傷の低減や後処理工程を削減しながら、より高い寸法公差を可能にします2。同様に、レーザー手術や他の医療用アプリケーションにおいては、超短パルスレーザーは消毒や麻酔の必要性を低減しながら、心的外傷を軽減させることができます3。レーザーの超短パルスは、大量のモード (または光の半波長の整数倍) を含む光波が、重畳した同相成分を通じてコヒーレントに発光する時に生成されます (Figure 4参照)。これはモード同期としても知られます。

Figure 4: Interference of coherent waves with many modes during mode-locking generates pulses with an ultrashort temporal width but broad wavelength bandwidth
Figure 4: モード同期中に多くのモードのコヒーレント波が干渉することで超短パルスを生成するが、波長の帯域幅は広くなる

GVDの波長依存性は、超短パルスの帯域幅の広さから大きな影響があり、光学系を通過する際に超短パルスの持続時間が引き伸ばされます (Figure 5)。入射パルスの持続時間 ($ \small{\tau_{\tiny{\text{In}}}} $) から拡がった出射パルスの持続時間 ($ \small{\tau_{\tiny{\text{Out}}}} $) の量はGDDに関係します (Figure 6):

(4)$$ \tau_{\tiny{\text{Out}}}= \tau_{\tiny{\text{In}}} \sqrt{1 + \left( \frac{4 \ln{\left( 2\right)  \times \text{GDD} } }{\tau_{\tiny{\text{In}}} ^2} \right)^2} $$

 

Figure 5: Dispersion leads to the broadening of ultrafast laser pulses. AOM stands for acousto-optic modulator, which is a component that allows lasers to emit a pulsed output
Figure 5: 分散は超短パルスレーザーのパルスの拡がりにつながる。 AOMとは音響光学変調器のことで、レーザーにパルス出力を発振させる部品
Figure 6: Depiction of temporal broadening, or increasing pulse duration, of a femtosecond ultrafast pulse after traveling through different optical media
Figure 6: 異なる光媒体を通過後のフェムト秒超短パルスの時間的な拡がり (パルス持続時間の増加)

ほとんどの光媒体は正の分散を呈するので、長波長のほうが短波長よりも高い位相速度で光媒体を通過し、パルス持続時間を引き伸ばします (Figure 5)。これは、正のチャープとして知られます。超短パルスレーザーは、帯域幅が広いために他のタイプのレーザーよりも分散の影響を強く受けます。

光干渉法は、超短パルス用光学部品の群遅延とGVDの測定に用いられる最も一般的な測量法です。詳細は、レーザーオプティクスに対する測量をご覧ください。

In addition to pulse broadening, chromatic dispersion may also make refraction angles at optical surfaces frequency-dependent, causing angular dispersion and frequency-dependent path lengths. Methods for dispersion compensation to improve the performance of ultrafast laser systems can be found in our Highly-Dispersive Mirrors application note.

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Ultrafast Optics:
Challenges and Solutions

Ultrafast lasers have revolutionized a number of application spaces, but optical components for these systems face a unique set of challenges that must be overcome to maintain high pulse quality and maximize performance.

参考文献:

  1. Ghatak, Ajoy, and K. Thyagarajan. “Optical Waveguides and Fibers.” University of Connecticut, 2000.
  2. Mielke, Michael. “Ultrafast Lasers: Ultrashort Pulse Lasers Bring Cost-Efficient Precision to Micromanufacturing.” Laser Focus World, 8 Apr. 2015.
  3. “The Benefits of Femtosecond Lasers and Why We Use Them.” Spindel Eye Associates, 16 May 2017, www.spindeleye.com/blog/2017/05/the-benefits-of-femtosecond-lasers-and-why-we-use-them/.
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