エアリーディスクと解像限界
著者: Greg Hollows, Nicholas James
本ページはイメージングリソースガイドのセクション2.4です
エアリーディスク
光がどんな開口の大きさ (有限開口) のレンズを通過する時でも、光の回折現象が必ず起こります。その結果、中央部に明るい領域を持ち、その周囲に暗い同心円状輪帯を有する回折パターンが生じます。これをエアリーディスクと呼びます (Figure 1参照)。このパターンの直径の大きさは、照明光の波長 (λ) と円形開口のサイズに関係します。これは重要なポイントです。なぜなら、エアリーディスクは、光が焦点を結ぶ場所での最小スポット径に相当するからです。物体の異なるポイントから各々形成されたエアリーパターンが隣接に位置し、重なり合い始めます (コントラストに関する詳細はこちらを参照)。パターン同士が互いに強め合う干渉を起こすほど重なり合う時、コントラストが減少し、最終的に互いのパターンが区別できなくなります。Figure 1は、レンズのFナンバーを各々F2.8とF8にした時のスポットサイズの違いを表わします。
Figure 1: イメージングレンズの絞りを閉じると (Fナンバーを増やすと)、光の回折が増える。上のレンズはF2.8設定時、対する下のレンズは F8設定時
Table 1は、緑色の光 (520nm) を照明に用いた時のFナンバー別エアリーディスク径の計算値です。実現可能な最小スポットサイズは、画素の小さなセンサーに採用される画素サイズをすぐに超えることになります。このことは、コントラストのレベルがどうであれ、センサーの解像度をフルに活用しようとするのを困難にします。加えて、この問題には、レンズデザインによる限界や、レンズ玉やレンズ系の組み立て時に生じる製造上の誤差をまだ全く考慮に入れていません。これらを考慮に入れてしまうと、理論上可能な最小スポットサイズの実現性が低くなり、その結果、解像力やコントラストのレベルも低下することになります。
Fナンバー | 波長520nmでのエアリーディスク径 (µm) |
---|---|
2 | 2.54 |
2.8 | 3.55 |
4 | 5.08 |
5.6 | 7.11 |
8 | 10.15 |
11 | 13.96 |
16 | 20.30 |
Table 1: 最小スポットサイズ、即ちエアリーディスク径は、Fナンバーを高くすると大きくなり、センサーの画素サイズをすぐに超えることになる。市場に流通するセンサーの画素サイズの一例は解像力を参照
補足: 本説明は全て理論上の説明であり、光学系の限界を理解する出発点となります。
どのレンズにも、物理学的法則とエアリーディスクに支配された絶対的な上限性能限界、即ち回折限界があります。この限界は、1mm当たりの空間周波数 $ \left[ \small{\tfrac{\text{本}}{\text{mm}}} \right] $ で表わされる、レンズの理論上の最大解像力です。
この限界は、2つのエアリーパターン (コントラストのFigure 2を参照) が互いに区別できなくなる時の両者の間隔に相当します。回折限界の解像力、あるいはレンズのカットオフ周波数とも呼ばれるこの性能は、レンズのFナンバー (f/#) と光の波長 (λ) を用いて計算することができます。Fナンバーに関する更なる情報は、こちらをご覧ください。
回折限界に到達した後、レンズはそれ以上の周波数で解像することはできなくなります。コントラストが0%になる時のFナンバー別回折限界をTable 2 に紹介します。表の数字はかなり高いようにも見えますが、厳密な理論値であり、これより数字を悪くする数多くの現実的ファクターを考慮しなければなりません。はじめに一般ルールとして、イメージセンサーはコントラストが0%に近い時、そのコントラストを再現することはできません。標準的イメージセンサーの場合、光を検出するには少なくとも10%以上のコントラストが必要になります。但しイメージングの複雑性を回避するため、少なくとも20%以上のコントラストがアプリケーション固有の重要な解像力として推奨されます。これに加え、レンズの収差や製造上の公差に起因するバラツキも性能を低下させます。
Fナンバー | λ=520nmでの0% コントラスト限界 $ \bf{ \left[ \small{\tfrac{\text{本}}{\text{mm}}} \right]} $ |
---|---|
1.4 | 1374 |
2 | 962 |
2.8 | 687 |
4 | 481 |
5.6 | 343 |
8 | 240 |
11 | 175 |
16 | 120 |
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