光学レンズの形状を理解する
光学レンズは、光を制御する光学設計において最も重要なツールです。光学設計者が光学レンズについて語る時、単一のレンズ素子かレンズ素子の集合体のどちらかを指しています (Figure 1)。単一素子の例では、平凸レンズ、両凸レンズ、非球面レンズなどがあり、レンズ素子の集合体の例は、テレセントリックレンズ、無限補正対物レンズ、ビームエキスパンダーなどがあります。各集合体は一連のレンズ素子から構成され、各素子はそれぞれ独自の方法で光を制御する特定のレンズ形状を有します。
Figure 1: 平凸レンズ (単一素子; 写真左) とテレセントリックレンズ (レンズ素子の集合体; 写真右)
スネルの屈折の法則
各タイプのレンズ形状を掘り下げる前に、光学レンズが屈折の性質を用いて光をどのように曲げるのかを考えてみましょう。屈折とは、光が媒質に入射あるいは出射するときに、その進行方向がある量で偏位される状態です。この偏位量は、媒質の屈折率と、光が面の法線に対してなす角度の関数になります。この特性は、スネルの屈折の法則 (式1) によって決まります。ここで、$ \small{n_1} $ は入射媒質の屈折率、$ \small{\theta_1} $ は入射光線の角度、$ \small{n_2} $ は屈折媒質の屈折率、$ \small{\theta_2} $ は屈折光線の角度です。スネルの法則は、光線が複数の媒質間を伝播するときの入射角と透過角間の関係を表わします (Figure 2)。
Figure 2: スネルの屈折の法則
光学レンズの専門用語
すべての光学レンズは、スネルの屈折の法則に従います。その結果、光学レンズの形状 (すなわち表面形状) によって、光が光学素子を伝播する際の挙動が決まります。光学レンズの仕様に用いられる専門用語を理解するために、よく使われる10の用語 (下記表) を考えてみます。より詳細な定義とその他の用語のリストは、当社の専門用語集をご覧ください。
よく使われる光学レンズの専門用語 | |
略語 | 専門用語 - 定義 |
---|---|
$\small{D} $, Dia. | 直径 - レンズの物理的サイズ。 |
$ \small{R, R_1, R_2}$ , etc. | 曲率半径 - 面の頂点から曲率の中心までの距離。 |
$ \small{\text{EFL}} $ | (有効) 焦点距離 - 光学レンズの主平面から結像面までの距離として与えられる光学的測定値。 |
$ \small{\text{BFL}} $ | バックフォーカス or 後側焦点距離 - 光学レンズの最終面から結像面までの距離として与えられる機械的測定値。 |
P, P" | 主平面 - 入射光線が屈折によって曲がると考えられる仮想の平面。EFLの大きさは、主平面の位置から規定される。 |
$ \small{\text{CT, CT}_1, \text{CT}_2} $, など | 中心厚 - 光軸上での素子の実質的厚さ。 |
$\small{\text{ET}}$ | コバ厚 - レンズ端面部の厚さ。レンズの曲率半径、直径、および中心厚から計算される値。 |
$ \small{d_b} $ | 入射ビーム径 - アキシコンレンズに入射するコリメートされた光の直径。 |
$ \small{d_r} $ | 出射ビーム径 - アキシコンレンズから出射する光のリングの直径。 |
$ \small{L} $ | 全長 - シリンドリカル素子 (シリンダーレンズなど) の端から端までの物理的距離、またはアキシコンレンズの頂点からワーク面までの距離。 |
光学レンズの形状
上の表のよく使われる専門用語を用いて、それぞれのタイプの単一レンズ素子の技術的数値を理解するのは簡単です。以下の表に、最も一般的に用いられる10種類の光学レンズとその代表的アプリケーションを示します。なお光学技術の進歩に伴い、フォーカス・チューナブルレンズなどの他の単一レンズ形状や、テレセントリックレンズなどのアッセンブリ品が光学設計時の貴重なツールになりつつあります。 テレセントリックレンズに関する追加情報は、テレセントリシティが有利な点をご覧ください。
光学レンズの一般的な形状 |
平凸レンズ|製品を見る |
単色照明を利用したコリメーションやフォーカシングアプリケーションに最適。補足:平凸レンズの曲面を共役点の長い方 (例えば平行光源など) に向けると、最善の性能が得られる。 |
両凸レンズ|製品を見る |
像のリレーや近い共役にある物体のイメージングに最適。補足:共役比が大きくなると収差が大きくなります。 |
平凹レンズ|製品を見る |
一つの平面と一つの内側に湾曲した面で構成。ビームの拡大、光の投影、および光学系の焦点距離の拡大に最適。 |
両凹レンズ|製品を見る |
二つの内側に等しく湾曲した面で構成。ビームの拡大、光の投影、および光学系の焦点距離の拡大に最適。 |
アクロマティックレンズ|製品を見る |
平凸または両凸レンズと同様の機能で、より小さなスポットサイズや優れた画質を提供。アクロマティックレンズは、球面収差や色収差を低減するのに有用。光を発散する負の焦点距離のレンズもあります。追加情報は、アクロマティックレンズをなぜ用いる?をご覧ください。 |
非球面レンズ|製品を見る |
レーザー集光あるいはシステム内の複数枚の球面レンズの置き換えに最適。球面収差を取り除き、他の収差を大幅に低減するのに有用。追加情報は、非球面レンズに関する全てを参照。 |
シリンダーレンズ|製品を見る |
入射光を集光してライン状にしたり、像の縦横比を変えるのに最適。負の焦点距離のレンズもあり。 |
平凸アキシコンレンズ|製品を見る |
レーザー光を集光して一定の厚みを持つリング状にするのに最適。補足:頂角が小さいほど、より大きなリングを生成します。追加情報は、アキシコンレンズの考察を参照。 |
ボールレンズ|製品を見る |
ファイバーカップリング、内視鏡学、およびバーコードスキャンアプリケーションに最適。半球レンズバージョンもあり。追加情報は、ボールレンズの理解を参照。 |
ロッドレンズ|製品を見る |
ファイバーカップリングや内視鏡学アプリケーションに最適。45° ロッドバージョンもあり。 |
光学レンズは、平凸レンズから非球面レンズまで、さまざまな形状やサイズがあります。各レンズタイプの長所と短所を知ることは、それぞれが固有の意図をもっているため、光学部品を選択する際にきわめて重要です。光学レンズの形状を理解することは、初心者から経験者まで、すべての人があらゆる光学設計において最適な光学レンズを選定するのに役立ちます。
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