レンズコバ面の墨塗り加工
直径が5mm以上の当社のレンズであれば、全てレンズコバ面への墨塗り加工の対応ができます。BBARマルチコートのレンズの商品コードの末尾に、単純に「-INK」を加えることで指定いただけます。例えば、直径 10mm、焦点距離 10mmのVIS 0°コート付き両凸レンズに墨塗り加工を施す場合、その商品コードは#63-599-INK になります。
迷光
レンズ複数枚により構成される光学系では、その光学的性能を制限する共通のファクターが存在します。迷光です。迷光は、光学系の有効径よりも外側のエリアに入射する光によって出来るもので、レンズの端面部 (コバ部)や機械パーツ部に当たって散乱した光が、センサー受光面に到達することによって生じます (Fig.1参照)。迷光は光の情報の中において、信号成分というより、むしろノイズ成分となって表われます。迷光対策で成功する方法の一つに、レンズのコバ部への墨塗り加工があります。
BRDF (双方向反射率分布関数)の測定
散乱光シグナルは、単位立体角当たりの散乱光量、つまり1/sr (ステラジアン)の単位を用いて一般に定量化されます。散乱光量は、散乱対象物に照射する入射光量によって標準化されます。この関数は、Bi-Directional Reflectance Distribution Function、略してBRDFという名前で一般に知られています。BRDFを単純化した公式は、単位角当たりの入射光量に対する反射光量の比で表されます。この測定は、レーザー光源を散乱対象物に向けてある特定の角度 (垂直入射以外)から投影することによって行います。散乱対象物内のレーザー照射地点を中心点として光ディテクターを回転させ、回転角に対する放射量の変化を記録していきます (Fig.2参照)。
Figure 1: レンズの口径から外れた位置にある物体に反射した後にレンズに入射する光は、レンズのコバ面に当たることで、散乱を引き起こします
Figure 2: 光ディテクターを用いた角度別の散乱光量計測
Fig.3は、摺りガラスと同ガラスの一面に墨塗り加工を施したものの散乱光量を測定したテスト結果です。このプロットによって、迷光の低減は、墨塗り加工を施すことによって大きく改善されることがわかります。墨塗り加工による迷光対策は、一般に高価とされる遮光板 (バッフル)を用いた機械的対策の必要性を潜在的に排除します。ディテクターの位置が-90°に近づくと、その入射角の大きさから、入射光量はゼロ近くになります。-5°の位置でもゼロになっていますが、これはこの位置にレーザー光源を配置しているため (Fig.2参照)、光源によってディテクターの受光が遮られているためです。次に+5°の位置においては、BRDFの値がピークになりますが、これは光源の正反射 (入射角 = 反射角)によるものです。最後に、+90°の位置になると、上述の-90°の状況と同じために、値はゼロになります。
Figure 3: 墨塗り加工の有無によるBRDF比較
結果
Fig.4とFig.5のグラフは、レンズ通過後の点光源 (グリーンレーザー光源)のビームプロファイルを光電センサーで記録したものです。点光源は、意図的にレンズの外周部に直射しています。Fig.4は、墨塗り加工をしていないレンズによるプロファイル、対するFig,5は、同加工を施したレンズによるプロファイルです。迷光による影響は、Fig.4グラフ中のノイズ量の多さからもわかります。このノイズが最終的に像面まで到達すると、画像のコントラストを低下させる結果となります。
Figure 4: ラインイメージセンサー中央からの放射強度分布 (墨塗り加工なし)
Figure 5: ラインイメージセンサー中央からの放射強度分布 (墨塗り加工あり)
墨塗り加工には、溶剤に強い塗料を使用します。欧州RoHS指令にも準拠しています。エドモンド・オプティクスでは、墨塗り加工を施した標準品を多数ラインナップしています。商品コードの算用数字5桁の後に「-INK」の文字が付いているものが墨塗り仕様のレンズです (例:商品コード“#45-491”のレンズの墨塗り仕様は、“#45-491-INK”になります)。もし必要なレンズの墨塗り仕様が本カタログ中に掲載されていない場合は、在庫品の二次加工サービスで対応可能です。
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