テレセントリック照明
本ページはイメージングリソースガイドのセクション11.4です
イメージングや検査事業には、最善の性能を達成するために精密な光学部品とアライメントが要求されます。こうしたマシンビジョン検査アプリケーションは、イメージングレンズ、照明用光源、カメラ、そしてメカニクス部品といった重要な部品を利用します。イメージングレンズとカメラの選択は、アプリケーションの成功に不可欠ですが、照明も非常に重要な役割を担います。照明タイプの中でも最も正確なタイプの一つがテレセントリック照明です。テレセントリック照明とは何なのでしょうか? 標準的なバックライト照明と比較してより良い結果がどの様にして得られるのでしょうか? この質問に回答するため、照明の理論やメリット、また現実世界での検査アプリケーションを考えてみましょう。
テレセントリック照明理論
オプティクスにおいては、テレセントリシティは、特定のマルチエレメントレンズデザイン固有の性質です。このデザインでは主光線がコリメートされて、像あるいは物空間、もしくはその両方の光軸に対して平行になります (Figure 1)。そのため、テレセントリシティの重要な性質に、像あるいは物体、もしくはその両方の位置にかかわらず倍率が一定になるという点があります。
テレセントリシティは、物空間、像空間、そしてその両方の三つに分類されます。テレセントリシティの詳細や定義については、テレセントリシティが有利な点をご覧ください。
Figure 1: 主光線が光軸に平行になるテレセントリシティの例
照明においても、同様に主光線がコリメートされて光軸に対して平行になるという概念が当てはまります。これはテレセントリック照明に該当します。テレセントリック照明は、コリメートバックライトと呼ばれる場合もあります。TECHSPEC® テレセントリックバックライト・イルミネーターのようなテレセントリック照明は、オプティクスを利用してファイバーライトガイドやLEDからの光を検査対象の物体に向け、高コントラストなシルエット画像を形成します。テレセントリック照明は、物体からの拡散反射を低減させることで輪郭部のコントラストと測定精度を向上させます。コリメート光線は照明器から出射された後、物体の表面に当たる際にもコリメートされた状態を保ちます (Figure 2a)。対照的に、標準的なバックライトからの光線は拡散して互いに干渉し、拡散反射を生み出します (Figure 2b)。この詳しい解説は、Imaging Lab Module 2.2: Telecentricityの動画 (英語字幕) でご覧いただけます。
Figure 2a: テレセントリック照明からのコリメート光線
Figure 2b: 標準的なバックライト照明からの拡散反射
テレセントリック照明は高コントラストシルエット画像をどの様に作る?
テレセントリックイルミネーターは、高品質なガラス製光学レンズを採用することによってファイバーライトガイドやLEDスポットライトからの光をコリメートします。光源からの発散光がマルチエレメントアッセンブリに入射後平行になり、出射する際はその強度を維持します。テレセントリックイルミネーターに入射するほぼ全ての光 (各光学レンズを通る際に起こる後方反射や吸収は考慮しないものとして) が検査対象の物体に当たります。加えて、テレセントリックイルミネーターの多くには、照明の強度を制御するための絞りが付いています。
テレセントリック照明の裏技?
標準的なテレセントリックレンズをLEDパターンプロジェクターやレチクルと組み合わせると、テレセントリックイルミネーターとして用いることができます。典型的なテレセントリックイルミネーターは、テレセントリックレンズを通過する光はコリメートされ、物体のシルエット画像を生成する際の拡散反射が取り除かれます。しかしながら、テレセントリックイルミネーターとは異なり、テレセントリックレンズを使用する場合は、LEDプロジェクター上の不完全性が現れる可能性があります。
テレセントリック照明のメリットとデメリット
テレセントリック照明は、高精度、高再現性、そしてスループットがアプリケーション成功の鍵となる正確な計測に最適です。ベストな結果を達成するため、テレセントリック照明の鍵となる8つのメリットを考えてみましょう。
- 小さな欠陥部の検出に優れる
- 標準的なバックライト照明と比較して計測精度と再現性が向上
- 拡散反射により引き起こされる輪郭ボケの除去
- コリメートされた光線による光強度の向上
- 輪郭ボケの除去と光強度の向上による高コントラスト画像生成
- 光強度の向上によってカメラの露光時間を短縮
- 標準的なバックライト照明よりも高速に撮影でき、スループットを向上できる
- 検査対象物と照明用光源間の距離を長くすることができる
しかしながら、テレセントリック照明には スペースが必要になる、また費用がかかる場合があるなどといったデメリットも存在します。被写体が大きくなると、より大きなテレセントリック照明が必要になります。スペースや費用が懸念となるアプリケーションの場合、コリメートバックライトの方がより適したオプションになるかもしれません。コリメートバックライトは、標準的なバックライトに光を平行にするためのフィルムが組み込まれています。テレセントリック照明ほどの性能は望めませんが、コリメートバックライトは標準的なバックライトよりも拡散が少なく、拡散反射により引き起こされる輪郭ボケを低減することができます。
アプリケーション例
テレセントリック照明の理論的な枠組みを理解することは大きな第一歩です。次のステップは、この高精度照明の現実世界のアプリケーションを分析し、マシンビジョンアプリケーションで必要とされる理由を理解することです。テレセントリック照明のメリットは、高速画像、ファクトリーオートメーション、シルエット化、欠陥部や輪郭部の検出を始めとする幅広いアプリケーションにとって理想的です。
一例として、ステンレス製のポストのねじ部の計測と外観検査を紹介します (動画は英語字幕)。検査対象物の検査対象部は小さなところで10mmで、ねじのピッチ部分を計測します。目視による選別は禁止されています。このアプリケーションに向け考えられた当初のシステムは、640 x 480 ピクセルのCCDカメラに0.6X TECHSPECR SilverTL テレセントリックレンズ (#56-675) を取り付け、照明には標準的LEDバックライトを使用したものでした。ピッキングロボットがポストを製造設備のターンテーブルから画像取得用のビジョンシステムへと移動します。2台目のピッキングロボットが取得画像から集められた情報を用いて当該パーツを合格と不合格の容器にそれぞれ選別移動します。
上手にデザインされた標準的なバックライト照明システムは、10mm未満の小部品を検査することが出きずに、検出率も10ppmに限定されていましたが、新しい生産ラインでは40ppmを維持するようにとの要求がありました。加えて、拡散LEDバックライトから得られる低照度の光は2.5m秒のカメラ露光時間を必要としましたが、新たな生産ラインでの要求速度は、ボケのない画像を得るために許された露光時間はたったの800μ秒でした。これに対応するための単純な改善方法は、カメラのゲイン設定を上げて露光時間を減らすことでした。しかしながら、これはシステムのSN比が上がり、計測精度を低下させました。
Figure 3: ポスト上のねじ径を撮像するテレセントリック照明システム (左) と、同ねじ径を撮像する標準的なバックライトシステム (右)
解決策はここで明白になりました – テレセントリック照明の使用です! 拡散LEDバックライトをTECHSPEC® テレセントリックバックライト・イルミネーター (#62-760) に換えることで、ねじ部に当たっている光の強度が増加し、カメラの露光時間が短縮でき、更には拡散反射の減少によって画像コントラストの全体的な増加となりました。
はじめのセットアップでは、バックライトからの拡散反射がボケた輪郭部を作り出していました。これをテレセントリック照明に代えた後は、輪郭部がクリアになり、検査の合否判定の決定が遥かに容易になりました(Figure 4)。またねじ加工の一部にあったバリは、標準的なバックライトではかろうじて確認できるだけでしたが、テレセントリック照明ではそれが簡単に検出できるようになりました。グラフは、テレセントリック照明システムと標準的バックライトシステムのコントラスト値を図解します。谷側の幅が広くなるほどコントラストが高くなることを表し、これが測定精度の向上につながります。
Figure 4:左側はテレセントリック照明システム使用時の輪郭部のクリアなシルエット画像。右側は標準的バックライトシステム使用時の輪郭部のボケた画像。
テレセントリック照明は、高速イメージングやファクトリーオートメーション、二値化、そして欠陥部や輪郭部の検出を始めとする一連のマシンビジョンアプリケーションに有益です。標準的なバックライトとは異なり、テレセントリック照明を用いることでクリアなシルエット画像が作り出されるため、輪郭部や欠陥部の検出に理想的になります。テレセントリック照明を用いるメリットは、ボケの無い輪郭部の高コントラスト画像や高速オートメーションが要求されるアプリケーションに対して極めて重要なことです。
使用した部品:
- 56-675 (0.16X SilverTL レンズ)
- 62-760 (52mm テレセントリックバックライト・イルミネーター)
- 87-544 (赤色LEDスポットライト)
- 56-871 (マウントクランプ)
- 58-867 (キネマティックミラーマウント)
- 製品群ID 2868 (インチねじタイプ ステンレス製マウントポスト)
- 製品群ID 1475 (ダブテイル式オプティカルレールシステム)
参考文献
- Butkus, Bruce. "Telecentric Illumination for Vision-System Backlighting." Machine Design. June 2, 2009. Accessed January 12, 2012. http://machinedesign.com/archive/telecentric-illumination-vision-system-backlighting.
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