アキシコンレンズの考察
アキシコンレンズとは?
アキシコンレンズは、アルファ (α)角と頂角で定義される円錐形状のプリズムです。平凸レンズ、両凸レンズ、非球面レンズといった光源からの光を、光軸を中心に集光する収束用レンズとは異なり、アキシコンレンズのデザインは光軸を中心とする複数のポイントにライン状に集光します (Figure 1)。その結果、アキシコンレンズによって生成されるビームは、光軸を横断後にリング状のビームを形成します。生成されるリング状ビームの直径は、照射距離が長くなるほど大きくなりますが、その時のリングの厚みは一定を保ちます。このようなビーム特性は、ベッセルビームの特徴に非常に近く、リングを形成するビームの強度は照射距離にかかわらず等しくなります。
Figure 1: アキシコンレンズによる集光
アキシコンレンズのベッセルビームの特徴
ベッセルビームは照射距離に依存して強度が低下するガウシアンビームとは異なり、回折がなく、遠くに伝搬しても強度分布が変わりません。真のベッセルビームは、形成するのに無限のエネルギー量を必要としますが、アキシコンレンズはその焦点深度 (DOF)内において回折の殆どない、ベッセルビームに近似したものを作ります。DOFの大きさは、アキシコンレンズに入射するビーム半径 (R)、アキシコンレンズの屈折率 (n) 及びアルファ (α)角の関数となり、次式で表されます。
先に述べたように、リングの厚さ (t)は一定を保ち、その大きさは簡単に決まります – 入射ビーム半径、即ち入射ビーム径 (db)の半分の大きさに等しくなります。
リングの直径は照射距離に比例し、レンズ出射から像面までの距離 (L)が長くなるとリングの直径 (dr)も大きくなり、距離が短くなるとリング直径が小さくなります。下記公式 (3)はこれを数学的に表しており、リングの直径が照射距離の2倍の大きさに比例し、屈折率とアルファ角の積の正接関数に比例することがわかります。
Figures 2 ~ 3は、アキシコンレンズによるグリーンレーザーの現実世界のリングパターン画像です。この2枚の画像から、リング直径の大きさが照射距離と共に変わる一方、リングの厚さを一定に保つアキシコンレンズの特徴が見て取れます。Figure 2が照射距離 L = 228.6mmの時、Figure 3が L = 355.6mmの時のリングパターン画像です。この2枚の画像は、ビーム径4mmのレーザー光源、127mm x 127mmサイズのホワイトバランスターゲット、アルファ角20°のアキシコンレンズを用いて作られたものです。どちらの画像もリングの厚さは2mmを維持していますが、リング直径はL = 228.6mm時で約73.66mmだったものが、L = 355.6mm時で約114.3mmに増えています。
Figure 2: アキシコンレンズから出射したグリーンレーザー光 (L = 228.6mm時)
Figure 3: アキシコンレンズから出射したグリーンレーザー光 (L = 355.6mm時)
アキシコンレンズのアプリケーション
アキシコンレンズのその独特な特性は、研究やメディカル分野の一連のアプリケーションに対して利用できます。例えば、目の屈折率状態を補正するためにレーザーで角膜組織を切除する角膜手術の改善に寄与することができます。レーザービームをリング状に変換するアキシコンレンズの能力は、角膜組織の平滑性や蒸発性の向上を可能にします。負と正のアキシコンレンズを一緒に用いた時、2つのアキシコンレンズ間の距離を調節することでリング直径を患者や外科医のニーズに合わせて調節することもできます。
アキシコンレンズは、レーザーを用いて引力や斥力を引き起こしてマイクロ粒子や細胞を操作する光ピンセットにも有益です。アキシコンによって作られたリングは、斥力的な壁として働き、リング状ビーム内の暗いエリア内にある粒子を捕捉します。捕捉した粒子を使った正確な操作に理想的となります。
アキシコンレンズと用いる光学用部品
ベッセルビームを再現するためには、アキシコンレンズとレーザー間のアライメントを行い、レーザー光がアキシコンレンズの光軸上を通るようにしないとなりません。アライメントや高いニーズに対応するために、レーザーやビームエキスパンダー、光学レンズマウントやポスト/ポストホルダーを始めとする各種光学用部品を利用することができます。一例として、ビームエキスパンダーは入射したレーザー光のビーム径を拡大し、ビーム発散角を縮小するため、アキシコンレンズがリング状ビームをより正確に作り出すことができます。また光学レンズマウントはアキシコンレンズを所定の場所に確実に保持するため、マイクロあるいはサブマイクロレベルのアライメントに向けた作業を容易にしてくれます。
光源から出射された光をその光軸にそって集光することで、アキシコンレンズはベッセルビームに近似したビームを形成します。アキシコンと像面間の距離に応じてリング直径の大きさを大きくも小さくもできますが、その時のリングの太さは一定を保ちます。アキシコンレンズは、リング状のレーザービームを必要とする測定やアライメント、研究やメディカルアプリケーションでの使用に最適です。
参考資料
- Haw, Weldon W., MD, and Edward E. Manche, MD. "Prospective Study of Photorefractive Keratectomy for Hyperopia Using an Axicon Lens and Erodible Mask." Journal of Refractive Surgery 16, no. 6 (November 1, 2000): 724-30.
- Mallik, Proteep. "The Axicon." Lecture, December 7, 2005. Accessed November 15, 2010.
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