光学技術の発展にとって、材料の入手可能性は常に重要な問題ですが、高出力レーザーアプリケーションの増加により、従来の光学ガラスを超えた材料の重要性が高まっています。最近の地政学と輸出規制の動向は、これら多くのレーザー光学用材料へのアクセスに大きな影響を与え、価格とリードタイムを押し上げ、時には材料へのアクセスを完全に妨げています。しかしながら、こうした世界的な傾向による悪影響を軽減するための措置を講じることは可能です。エドモンド・オプティクスのグローバルで多様なサプライチェーンは、こうした課題の影響を軽減し、小規模でローカルな光学サプライヤーよりも高い信頼性をもたらします。

コーティング材料のサプライチェーンを破壊する地政学

Figure 1: HFO₂ やTa₂O₅のような光学用薄膜コーティング材料は、地政学的な複雑さが主な原因となって、最近大幅に値上がりしている。

国家間の貿易制裁やその他の地政学的な懸念が、多くの光学材料の供給を制限しています。酸化ハフニウム (IV) (HFO₂) や五酸化タンタル (Ta₂O₅) のような、ハイエンドフィルターやレーザー光学部品に使用される光学用薄膜コーティング材料は、2024年初頭に価格が高騰しました。ハフニウムの価格は、2022年半ばと比較して150%以上上昇しました (Figure 2) ¹。HFO₂ は、高屈折率、優れた熱安定性、低吸収率を持つ材料であり、光学コーティングへの使用に最適にします。

Figure 2: ハフニウムの価格は近年劇的に上昇しており、2022年半ばから150%以上も上昇している¹

ハフニウムはジルコニウム鉱山の副産物であり、操業しているジルコニウム鉱山がある地域は限られているため、ハフニウムの供給源は限られています。多くの企業は、原材料の入手可能性や地政学的リスクを軽減するために、たとえ低コストの国にアウトソーシングするより割高になるとしても、可能な限り光学部品生産の「リショアリング」をしています。

環境規制による供給不足

生態系への懸念や規制の高まりも、環境負荷の少ない材料を使った光学コーティングの開発を後押ししています。たとえば、タンタルの採掘は森林破壊、土壌の浸食、地域の生態系の破壊につながる可能性があります。研究者たちは、廃棄物や環境への悪影響を減らすため、より環境に優しい素材やプロセスを調査しています。

さまざまな環境・エネルギー関連規制による波及効果は、光学材料のサプライチェーンに影響を与える可能性があります。例えば、原子炉の大型部品製造の副産物であるハフニウムの切削くずが、光学コーティング用のハフニウムの供給源です。原子炉部品の製造が減少したため、この供給源は減少しました (Figure 3) 。一方、需要は減らないために、価格は高騰しています。

Figure 3: ハフニウムの切削くずは、原子炉の大型部品を製造する際の副産物だが、多くの国の原子力への投資縮小により、光学コーティング用のハフニウムの供給源は減少している。

持続可能な光学コーティング材料へのニーズは、再生可能エネルギー、自動車製造、航空宇宙など、特に環境規制の厳しい産業で高まると予想されています。

素材調達におけるその他の課題

地政学の影響以外でも、より多くの材料不足と価格上昇が光学産業に影響を与えています。COVID-19のパンデミックによる混乱は、2024年の市場にも影響を及ぼしています。パンデミックによる需要の急激な変動は、材料の入手可能性とコストの不安定性を増大させ、それが数年後も続いているからです²。

また、防衛用途に使用される可能性のある材料の中には、輸出規制されているものもあり、これはグローバルな製造業にとって問題となります。このような原材料価格とリードタイムの上昇は、残念ながら、光学を利用したテクノロジーのエンドユーザーや光学のOEM企業に転嫁されることが多くあります。

エドモンド・オプティクスではどのようにこれらの材料調達の課題を軽減するか

エドモンド・オプティクスの強力で多角的なグローバルサプライチェーン、8つのグローバル製造施設、その他多くの拠点は、多くの中小企業よりもこれらの課題を乗り切るのに非常に有利な位置にあります。

数十年にわたる光学メーカーとしての経験、原材料供給業者との緊密なパートナーシップ、原材料のグローバルな調達先の複数確保など、光学製造と原材料調達の両面における専門知識により、リスクを低減し、コストとリードタイムを削減します。当社の研究開発 (R&D) および製造チームはまた、供給が不安定な重要素材への依存度をさらに低下させるため、代替素材の選択肢の特定を進めています。

地政学やその他の原料不足の原因による影響は避けられず、そのため価格が上昇せざるを得ない場合もありますが、強固なサプライチェーンと研究開発努力により、お客様への影響を可能な限り軽減しています。

小規模な現地の光学メーカーの場合、堅牢でグローバルなサプライチェーンにアクセスできないことで、思った以上にリスクを伴う可能性があります。材料の入手に関する懸念やお客様のアプリケーションについてのご相談は、今すぐお問い合わせください。