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反射率:思ったよりも複雑です

 

高反射レーザーミラーはビームステアリングにとって重要な部品

 

業界標準の反射率測定法ですべてを把握することは不能

 

反射率はシンプルなようで実際には測定が難しい値

 

反射率を特定するのにキャビティリングダウン分光法 (CRDS) を用いて全体損失を測定

反射率が 99.8% ~ 99.999% の高反射ミラーは、スループットを最大化しながらビームステアリングを行う上で、多くのレーザーシステムにとって重要な部品です。業界では、分光測光法を用いて透過率を測定し、残りの光は反射されたと見なすことによってミラーの反射率を求めることが一般的な慣行になっています。しかしながら、この慣行には散乱や吸収の視点が考慮されていないため、算出した反射率の値は楽観的なものになりがちです。反射率が99.5%を超えるミラーでは、キャビティリングダウン分光法 (CRDS) によって全損失を測定し、反射率を特定するのがより正確な方法となります。お客様のサプライヤーの測定法を理解することが、現実世界での性能を予測する上で重要なのです。

誤った仮定:透過率の測定だけでは十分ではありません

ミラーの反射率を分光光度計を用いた透過率測定によって特定することは、光学部品のサプライヤーにとって一般的な慣行になっています。これは、散乱や吸収はほんの僅かに過ぎないという仮定に基づいたものですが、非常に高い反射率が求められる場合、この僅かな影響が大きな影響を及ぼすことになります。 分光光度計では99.5%未満の反射率であれば直接測定できますが、それ以上になると分光光度計の信号対雑音比 (SNR) の限界に達します。

誤った結論: ∑Intensity (強度の総和) = Reflection (反射量) + Transmission (透過量)

正しくは: ∑Intensity (強度の総和) = Reflection (反射量) + Transmission (透過量) + Scatter (散乱量) + Absorption (吸収量)

解決法:キャビティリングダウン分光法 (CRDS)

高反射ミラーの測定法としてもっとも正確なのはキャビティリングダウン分光法 (CRDS) です。これは、透過、吸収、散乱をはじめとした、ミラーの全損失を測定する方法です。レーザーのパルスは、2枚の高反射ミラーに囲まれた共振器に送られます (Figure 1)。反射したレーザー光は、共振器内で往復し、反射する毎に僅かな量の光を損失します。2枚目のミラーの後ろに置かれたディテクターが反射光の強度の減衰を測定します。ミラーの全損失は、この反射光の減衰時間 (リングダウン) によって特定されます。

3D printed mechanics used for prototyping
Figure 1: 透過、吸収、散乱をはじめとしたレーザーミラーの全損失はCRDSによって特定される

共振器内のレーザーの強度 (I) は以下の式で表されます:

$$ I = I_0 \exp{ \left[ - \left( \frac{\tau \, t \, c}{2 \, L} \right) \right]} $$
I0: 初期のレーザーパルス強度
τ: 共振器ミラーの全損失
t: 時間
c: 光速
L: 共振器長

現実世界の例

2枚の高反射ミラーの透過率は、透過分光測光法を用いて測定されました (Figure 2)。測定されたMirror 2の透過率は、Mirror 1に比べて大幅に低く、Mirror 2のほうがより高い反射率をもつことになります。他の方法で測定を行わなければ、Mirror 1の名目反射率は99.9%、Mirror 2の名目反射率は99.99%と見なされます。

Mirror 2 appears to have a higher reflectivity than Mirror 1 when analyzing them both using transmission spectrophotometry
Figure 2: 分光測光法を用いた解析では、Mirror 2はMirror 1よりも高い反射率をもつことになる。

しかし、この2枚のミラーをCRDSを用いて測定すると、それが正しくないことが明らかになります。Mirror 1の損失値は、分光測光法を用いて特定された名目反射率と矛盾がありません。しかしながら、Mirror 2の反射率はCRDSシステム内で共振を起こせないほどに低いものでした。反射分光測光法を用いて直接その反射率を測定したところ、Mirror 2の性能はMirror 1よりもずっと低く、末端の反射率は吸収と散乱によってMirror 1よりも0.5%低下することがわかりました (Figure 3)。短い波長で特に反射率が下がるのは、吸収と散乱による特徴です。

Using CRDS and reflection spectrophotometry revealed that Mirror 2 actually has significantly lower reflectivity than Mirror 1, especially at lower wavelengths
Figure 3: CRDSと反射分光測光法を用いることで、Mirror 2は実際にはMirror 1よりも大幅に低い反射率 (特に短波長において) をもつことが明らかになった。

この例は、高反射レーザーミラーに対して適切な測定法を用いることがいかに重要かを示しています。Mirror 2の反射率が99.99%であると信じた場合、システムエラーにつながっていた可能性があります。実際にはMirror 2の反射率は99.5%でした。こうした試験値と真値の相違は、性能の低下や安全性の問題だけではなく、壊滅的なシステム損傷につながることになります。

オンラインセミナー: レーザーアプリケーション用の高反射ミラー (英語音声)

Chris Cook、Tony Karam、Ian Stevenson、Stefaan Vandendriesscheによるオンラインセミナー (録画) では、CRDSやレーザーアプリケーション向けの高反射ミラーについてより深く学習いただけます。

エドモンド・オプティクスの高反射ミラー

エドモンド・オプティクス (EO) は、高反射および高透過オプティクスの損失測定を高感度で行うため、CRDSを使用しています。EOのCRDSシステムは、1064nm、532nm、355nm、266nmといった一般的なNd:YAG波長や高調波用に調整されています。ご要望に応じて、他の波長用にも調整することができます。

よくある質問(FAQ)

CRDSは99.5%を超える反射率を持つミラーの測定のみに用いることができます。なぜなら、それ以下の反射率の場合、リングダウン時間が短すぎてCRDSでは検出できないためです。反射率の特定に最適な手法は、反射率のレベルとアプリケーションの要件によって異なります。

反射率が99.5%を下回るミラーには、反射分光測光法を用いて反射率を直接測定することができます。しかしながらこの手法は、これよりも反射率が高いミラーには、システムの信号対雑音比 (SNR) の限界に達してしまうため機能しません。

はい。吸収は、光の吸収量を決める屈折率の変化を測定する光熱偏向分光法を用いて直接測定できます。散乱は、散乱計もしくは原子間力顕微鏡 (AFM) を用いて直接測定できます。AFMは、サンプルの非常に正確なトポロジカルマップを作製し、その粗さを測定します。その後、その測定値を用いて散乱を計算することができます。

試験用ミラーの損失を決定するために、反射率の不明な試験用ミラーと参照用ミラーの両方を用いた試験を複数回実施する必要があります。

参考資料

  •  
    アプリケーションノート
     
  •  
    計算ツール
     
  •  
    ビデオ
     

アプリケーションノート

理論的説明や公式、図解などを網羅した技術情報やアプリケーション実例です。

レーザーコンポーネントにおけるレーザー誘起損傷閾値 (LIDT) の理解と規定
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