異物や泡に起因する均質性や散乱
本ページはレーザーオプティクスリソースガイドのセクション8.5, 8.6です
均質性
光学基板の均質性は、屈折率の変動を特性化したものであり、透過波面の変形や偏光透過の影響に繋がります1。これは、次式のように定義されます:
ここで、$\small{\Delta s}$は波面の偏差、dは基板の厚さ、そして$\small{\Delta n}$は屈折率のP-V変動です。高度な均質性、即ち低度なバラツキは、ハイパワーレーザーを用いたアプリケーションにおいて重要です。均質性のバラツキは、材料が溶解される工程から起こります。不適切な混合や熱力学的な不均衡が均質性に影響を及ぼし、除冷やアニール処理の工程で歪みの特性が最終的に決まります。不均質性は、グローバルな非均質性か脈理のどちらかを形成します。前者は屈折率がガラス全体にわたり変動している状態、後者は、約0.1mm~2mmまでの距離に対応した空間的に短い範囲でガラス内部に非均質性が生じている状態です。Table 1に、均質性クラス別の屈折率の最大変動を紹介します。
SCHOTT 均質性クラス | ISO規格10110 パート4: 均質性クラス |
CORNING 均質性クラス | ISO規格10110 パート4に準じた 屈折率の最大変動 |
S0 | 0 | - | ±50 × 10-6 |
S1 | 1 | - | ±20 × 10-6 |
H1 | 1 | - | ±20 × 10-6 |
H2 | 2 | F | ±5 × 10-6 |
H3 | 3 | C | ±2 × 10-6 |
H4 | 4 | A | ±1 × 10-6 |
H5 | 5 | AA | ±0.5 × 10-6 |
Table 1: 均質性クラスと屈折率の最大変動値の関係2
屈折率分布型 (GRIN) レンズは、意図的に不均質性を持たせたレンズの一種で、ランダムではない、決められた屈折率分布によって光線を非線形に曲げます(Figure 1)。
Figure 1: 均質性レンズと光を一点に集光するGRINレンズの比較
不均質性は散乱を引き起こし、レーザーシステムの性能低下やハイパワーレーザーによるレーザー誘起損傷を引き起こします。損傷を防ぎ、エネルギーを効率的に用いるため、透過型のレーザーオプティクスには高度な均質性が極めて重要で、これにより透過波面の変形や偏光透過の影響を防ぐことができます。
異物や泡に起因する散乱
異物とは、ガラス溶解時の汚染や溶解しきれなかった基板のバッチ、および難溶解性の壁材を始めとする様々な過程で光学ガラスに混入する異物粒子のことです。泡もガラス溶解中に生じる反応によって作られます。泡は、ガラス溶解中の精製段階でほぼ完全に除去されますが、精製が不完全であると泡が残留することがあります。洗練された製造プロセスを用いることで、光学ガラス中の異物や泡はほぼ無くなりますが、ごく少量残ってしまうことは避けられません。レーザーオプティクスでは、異物によって光が散乱されるため、異物の混入はレーザー誘起損傷閾値 (Laser Induced Damage Threshold; LIDT) の値を下げます。この影響の程度は、ガラス中の異物の数や性質およびサイズに依存します。
ガラスの異物や泡の含有量は、検出された泡の断面積の合計から計算され、ガラス体積cm3当たりの合計断面積 (mm2) で表されます。100cm3 当たりで許容可能な泡の最大直径と数は、各断面積毎に定義されます。異物は、同じ断面積を持つ泡と同様に扱われます。泡の含有量は3つのクラスに分類されます:標準、VB (高規格泡選別)、及びEVB (超高規格泡選別) です。
標準 | VB | EVB | |
ガラスの最大断面積合計 |
0.03 |
0.02 |
0.006 |
100cm3当たりの最大許容数 |
10 |
4 |
2 |
標準 |
VB |
EVB |
|
体積 (cm3) | 1つの気泡の最大許容直径 (mm) | ||
800 | 0.55 | 0.45 | 0.25 |
500 | 0.44 | 0.36 | 0.20 |
300 | 0.34 | 0.28 | 0.15 |
200 | 0.28 | 0.23 | 0.12 |
100 | 0.20 | 0.16 | 0.09 |
50 | 0.14 | 0.11 | 0.06 |
Table 2: SCHOTT社の光学媒質中の泡と異物のクラス3
Corning 異物クラス | ガラスの最大断面積合計 (単位: mm2 /100cm3) |
異物の最大サイズ (mm) |
0 | ≤0.03 | 0.10 |
1 | ≤0.10 | 0.28 |
2 | ≤0.25 | 0.50 |
Table 3: Corning社の光学媒質中の異物クラス
参考文献
- F. Reitmayer and E. Schuster, "Homogeneity of Optical Glasses," Appl. Opt. 11, 1107-1111 (1972)
- “TIE-26: Homogeneity of Optical Glass.” Schott, February 2016.
- “TIE-28: Bubbles and Inclusions in Optical Glass.” Schott, May 2016.
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