照明方法の正しい選択
本ページはイメージングリソースガイドのセクション11.1です
撮像光学系で必要とする像コントラストや解像度が得られずに、悩んだ経験はないでしょうか?このような経験は誰にでも大抵はあることです。この場合、多くの経験者はより解像力の高いレンズやソフトウェア、或いは高解像度カメラを用いて解決しようと試みます。そしてそれを試みても結果的に思うような成果が得られないというケースが多いのも事実です。必要とする画質を得るために、適切な照明方法を選択しているでしょうか?
適切な照明を用いることは、大抵のケースにおいて非常に重要なことです。上述のような悩みを持つ経験者というのは、実は照明を余り重要視しない方に多く見受けられます。不適切な照明法を用いているがために、不要なグレアやホットスポット、また影の発生等の多くの問題を引き起こしている場合があります。不適切な照明法が、得られる画質のS/Nを低下させる主要因となり得るのです。また画像計測用途における影の発生は、計測精度を低下させる要因となります。これらは、アプリケーションにおいてなぜ照明の正しい選択が必要であるかを述べるほんの一例にすぎません。
不適切な照明の落とし穴は明らかですが、どのように回避したらよいでしょう? マシンビジョンシステムを構築する際に最適な照明を選定するため、システムを構成する各パーツの役割を認識することがとても重要です。どのパーツも、システム最終段に当たるカメラのイメージセンサーに入射する光量に影響を与えるため、システムで得られる画質にも影響を与えることになります。カメラレンズのFナンバーは、後段のカメラへの入射光量に影響を与えます。絞りを用いてレンズの開口を制限した場合 (高Fナンバー時)、光量を補う目的で照明側の出射光量を増やさなければなりません。使用するレンズの光学倍率が高くなると、得られる実視野が小さくなるために、よりそのようにしていく必要があります。またカメラの仕様の一つである最低被写体照度の把握も、システムが必要とする最小光量を決定するために重要となります。カメラのゲイン設定や露光時間設定 (シャッタースピード)等もセンサーの感度に影響を与えます。ファイバー光源には通常、照明器とライトガイドが含まれます。各々は、対象物への照明を最適化するために統合されなければなりません。
Table 1: 主要な測光単位 | |
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1 フートカンデラ | = 1 ルーメン/ft2 |
1 フートカンデラ | = 10.764 メートルカンデラ |
1 フートカンデラ | = 10.764 ルクス |
1 カンデラ | = 1 ルーメン/ステラジアン |
1 カンデラ | = 3.142 x 10-4 ランバート |
1 ランバート | = 2.054 カンデラ/in2 |
1 ルクス | = メートルカンデラ |
1 ルクス | = 0.0929 フートカンデラ |
1 メートルカンデラ | = 1 ルーメン/m2 |
当社の照明製品の光強度の大きさは、フートカンデラで主に規定されます。国際単位であるルクスで換算すると、フートカンデラは以下の値となります: 1 ルクス = 0.0929 フートカンデラ。
Table 2: 各種照明の比較 | ||
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求められるアプリケーション | 検査対象物 | お勧めする照明タイプ |
鏡面反射の削減 | 光沢をもつ物体 | 拡散正面、拡散同軸、偏光 |
物体への均一照明 | あらゆる種類の物体 | 拡散正面、拡散同軸、リングライト |
表面欠陥の強調またはトポロジー | ほぼ平面 (2D)の物体 | 単一方位、構造化 |
影をもつ物体のテクスチャーの強調 | あらゆる種類の物体 | 方位、構造化 |
影の減少 | 凹凸のある3D物体 (立体対象物) | 拡散正面、拡散同軸、リングライト |
物体内部の欠陥の強調 | 透明な物体 | 暗視野 |
物体のシルエット化 (二値化) | あらゆる種類の物体 | バックライト |
物体の3D形状プロファイリング | 凹凸のある3D物体 (立体対象物) | 構造化 |
照明の種類
適切な照明の選択が、システム成否の分かれ目となることが多々あるため、照明の最も共通の阻害要因を克服すべく、様々な製品や技術が開発されてきました。本セクションを通じて用いられたターゲットは、物体の様々な特徴に対して、それぞれの照明スキームのメリットとデメリットを明示するために開発されました。ターゲット上の溝や色、表面の変形や反射エリアは、実際のアプリケーションにおいて特別な配慮が求められる共通のトラブル要因をいくつか再現しています。
方位照明 – 一定方向からのスポット光照明。一点、或いは複数の光源を使用。レンズを併用して収束光や発散光を作り出す応用もあり。不透明で比較的フラットな対象物への照明、検査に効果的。 | |
メリット | 明るい照明。照射角度に柔軟性あり。様々なアプリケーションで使用可能。異なるパッケージングに容易に適合。 |
デメリット | 影やグレアの発生。 |
対象製品 | ファイバーライトガイド、フォーカシングアッセンブリ、LEDスポットライト、白熱灯。 |
アプリケーション | つや消しで平面的な物体の検査と測定。 |
側位照明 – 一定方向からのスポット光照明。方位照明と異なり、対象物を真横から照射。 | |
メリット | 対象物表面の構造を描写し、対象物の構造的特徴を強調。 |
デメリット | ホットスポットの発生。極端な描写。影の発生。 |
対象製品 | ファイバーライトガイド、フォーカシングアッセンブリ、LEDスポットライト、白熱灯及びラインライトガイド。 |
アプリケーション | 奥行きのある物体内の欠陥部の識別や不透明物体の仕上げ検査。 |
拡散照明 – 広範な発光面を持つ光源からの均質な拡散光を利用。 | |
メリット | グレアの発生を低減し、均一な照明を提供。 |
デメリット | 光源の大型化。スペースに制限があると設置が困難。 |
対象製品 | 直管型蛍光灯。 |
アプリケーション | 長い作動距離がある、大型で光沢のある物体の撮像に最適。 |
リング照明 – レンズ鏡筒部に直に固定できる共軸落射照明。 | |
メリット | レンズに直に固定し、影の発生を軽減。適切な照射距離で比較的均一な照明が可能。 |
デメリット | 正反射体に照射時、リング上のグレア発生。照射距離が長いと有効に機能しない。 |
対象製品 | リングライトガイド、蛍光灯リング照明、LEDリング照明。 |
アプリケーション | つや消し状の物体を対象とした様々な検査・測定システム。 |
拡散同軸照明 – レンズと同軸上に落射する拡散光照明。レンズはビームスプリッター越しに物体からの反射光を撮像。照明とイメージングの光路を同軸化。 | |
メリット | 均一光照明で、影の発生やグレアの発生がとても少ない。 |
デメリット | 低スループット照明のため照射距離に制限あり。十分な光量を確保ために、複数のファイバー光源が必要となる場合もあり。サイズが比較的大きく設置が大掛かりになる。 |
対象製品 | LED拡散同軸イルミネーター、拡散同軸イルミネーターアダプター (その他 1台、或いは複数台のファイバー光源とファイバーライトガイドも必要)。 |
アプリケーション | 光沢のある物体の測定と検査。 |
構造化照明 (光切断) – 幾何学的パターンを対象物に投影。レーザー光源を用いたラインパターン、ドットパターン、格子パターン、円形パターン等が一般的。 | |
メリット | 狭い範囲に強い照明を照射することにより、対象物の特徴を描写。物体の深さ情報を得るのにも使用。 |
デメリット | 光強度がとりわけ強い。レーザー光源使用時では単色光照射になるため、対象物によって一部の色が吸収される。 |
対象製品 | 幾何学的パターンを形成する屈折や回折光学素子を装着したレーザー。 |
アプリケーション | 3D物体 (立体対象物)の特徴を描写する検査、トポグラフィー測定。 |
偏光照明 – 方位照明の一種。2枚の偏光フィルターを併用 (偏光子と検光子として機能)。対象物からの不要な反射光や、照明のホットスポットを除去。 | |
メリット | 偏光照明下で対象面全体に均一な照明。同面の特徴の描写を阻害するグレアの発生を低減。 |
デメリット | 偏光フィルターの併用により、レンズに入射する光量が低下 (暗い画像)。 |
対象製品 | 偏光フィルターと偏光子/検光子用アダプター。 |
アプリケーション | 光沢のある物体の測定と検査。 |
暗視野照明 – 透光性のある物体を後方の周囲、或いは真横から照射。散乱した光のみがカメラレンズに入射。 | |
メリット | 透光性のある対象物の表面や内部の状態を高コントラストに視覚化、透光性のある対象物のキズ、欠け、泡の状態を強調。 |
デメリット | 輪郭部の描写が弱い。不透明な対象物には使用不可。 |
対象製品 | 暗視野照明アタッチメント、ラインライトガイド、レーザーラインジェネレーター。 |
アプリケーション | ガラスとプラスチックの検査。 |
明視野バックライト照明 – 対象物を後方から照明。不透明な物体をシルエット化し、輪郭物を検出。透光性のある色を持った対象物の選別にも効果的。 | |
メリット | 輪郭部を高コントラストで描写。 |
デメリット | 表面の状態は見えない。 |
対象製品 | テレセントリックバックライトイルミネーター、LEDバックライト、ファイバー照明用バックライト、CCFLバックライト。 |
アプリケーション | ターゲットおよびテストパターン、エッジ検出、不透明物体の測定および半透明の色がつけられた物体の選別。 |
様々なコントラストレベルを提供するフィルタリング
暗視野とバックライト照明時に、色フィルターを使用する例。注: 画像は10Xのマクロビデオズームレンズ#54-363で撮影: 実視野 = 30mm、作動距離 = 200mm。
暗視野のみ 欠陥部分が白く見える。
暗視野に青色フィルターを使用欠陥部分が青く見える
暗視野とバックライト照明フィルターを使用しなくても、エッジコントラストが改善する。
フィルターなしの暗視野、及び黄色フィルターを使用したバックライト照明全体的なコントラストが強調され、欠陥部分が他の部分と対照的に白く見える。
偏光板を使用した画像強調
偏光板は、鏡面反射(グレア)を除去し、画像の表面にある瑕疵を際立たせるのに有効です。偏光板は、検査対象物に応じて、光源側、ビデオレンズ側、あるいはその両方に取り付けます。2枚の偏光板を使用する場合は、照明光源とビデオレンズ上にそれぞれを配置し、互いの偏光軸は垂直にしなければなりません。以下は、いくつかの異なる素材や環境に対する、偏光板を用いたグレア問題への解決策です。
課題 1
オブジェクトは非金属で、照明が鋭い角度で入射する場合。
解決策 1
レンズ側の偏光板によって、大抵はグレアを十分に除去できます (グレアが最小になるまで偏光板を回転します)。グレアがまだ存在する場合は、光源の前方に偏光板を1枚追加します。
偏光板なし
偏光板あり
課題 2
対象物が金属もしくは表面に光沢のある場合。
解決策 2
コントラストを強め、表面の細部を際立たせるために、偏光板を光源とレンズに装着することをお勧めします。偏光した光が光沢面に入射すると、その反射光も偏光の状態が維持されます。金属の表面に瑕疵があると、反射光の偏光がくずれます。レンズ側の偏光板の偏光軸が照明光源のそれと垂直になるように回すとグレアが抑えられ、表面のスクラッチやピンホールが見えるようになります。
偏光板なし
偏光板あり
課題 3
対象物に反射しやすく、かつ拡散しやすい箇所がある場合。
解決策 3
2つの偏光板を互いの偏光軸が垂直になるように使用すると、金属部分によって引き起こされる画像のホットスポットが除去されます。視野の残りの部分は、拡散箇所によってランダム偏光の状態でレンズに入射するため、均等に照らされた状態で映ります。
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